2008年度の展覧会

蜀山人 大田南畝 -大江戸マルチ文化人交遊録

北尾政演『吾妻狂歌文庫』
特別展
2008年5月1日(木)~6月26日(木)
前期:2008年5月1日(木)~5月25日(日)
後期:2008年6月1日(日)~6月26日(木)
前後期展示替えあり

※図録(税込み¥2,200)および『蜀山人・大田南畝のすべて』(著・渥美國泰氏里文出版 税込み¥2,415)はご好評につき完売いたしました。

石崎融思「大田南畝肖像」(部分)(個人蔵)・・・新発見の肖像

石崎融思「大田南畝肖像」(部分)(個人蔵)・・・新発見の肖像

蜀山人(しょくさんじん)の名前でも知られる大田南畝(おおたなんぽ)は、江戸時代中・後期、下級武士でありながら、狂歌師や戯作者、また学者としても人気を博したマルチな文化人です。この南畝を中心にして、武士や町人たちの身分を越えた交流が生まれ、さまざまな絵画や文芸が花開きました。
江戸時代研究者の中では非常に重要な存在として考えられている大田南畝ですが、これまでまとまった形での展覧会は開催されておらず、また、現代の私たちにとってすっかり馴染みの薄い人物になってしまいました。
本展では、大田南畝の活動を軸にしながら、武士や町人たちの身分を越えた交流関係、さらにはそこから生まれた絵画や文芸などを紹介し、江戸の庶民文化が持つ多彩な世界を改めて見直します。

1.江戸の庶民文化の大御所、大田南畝とは何者か?

北尾政演『吾妻狂歌文庫』(東京都立中央図書館加賀文庫蔵)・・・若かりし南畝の肖像。百人一首のパロディのような仕立

北尾政演『吾妻狂歌文庫』(東京都立中央図書館加賀文庫蔵)・・・若かりし南畝の肖像。百人一首のパロディのような仕立

大田南畝は蜀山人の号でも知られており、中学校の歴史教科書にもその名前が載っていますが、現代の私たちにはすっかり馴染みが薄くなってしまっています。蜀山人と聞いて、美食家で陶芸家の北大路魯山人と勘違いされる笑い話もしばしばあるようです。落語が好きな方は、蜀山人の面白おかしい狂歌がしばしば噺に取り上げされるので聞き覚えがあるかもしれません。現代ではすっかり忘れ去れている南畝でありますが、さまざまな絵師や戯作者、学者など関わりの深く、実は、江戸の庶民文化を語る上では決して外すことができない大御所ともいえる存在なのです。謎の人物・大田南畝の実像に迫る、日本で初めての本格的な展覧会です。

2.昼は真面目な役人、夜は引く手あまたの文化人

喜多川歌麿「三保の松原道中」(太田記念美術館蔵)・・・美人画の第一人者、歌麿が描いた錦絵。南畝の狂歌仲間のために作られた。

喜多川歌麿「三保の松原道中」(太田記念美術館蔵)・・・美人画の第一人者、歌麿が描いた錦絵。南畝の狂歌仲間のために作られた。

大田南畝の業績で最も知られているのは、五七五七七の歌を面白おかしく詠んだ狂歌でしょう。例えば、「世の中は酒と女が敵(かたき)なり どうか敵にめぐりあいたい」という歌には、時代を越えても変わらぬ面白さがあります。大田南畝は、狂歌、さらには、狂詩や戯作など、笑いに溢れた文芸作品をたくさん執筆し、ベストセラー作家として人気を博し、ついには物語の登場人物にもなりました。しかしそれはあくまで裏の顔。表の顔の南畝は、身分の低い幕臣(御徒歩職)として、70歳の高齢を過ぎても幕府への勤めに励んだ、真面目で実直な役人だったのです。昼は真面目に仕事に励み、夜は大勢の仲間たちと戯れる文化人。二つの世界を南畝は巧みなバランス感覚で渡り歩いていました。

3.武士と町人、身分を越えた文化コミュニティ

喜多川歌麿「夷歌連中双六」(大妻女子大学図書館蔵)・・・狂歌を双六に仕立てた巨大な摺物

喜多川歌麿「夷歌連中双六」(大妻女子大学図書館蔵)・・・狂歌を双六に仕立てた巨大な摺物

江戸時代は士農工商の身分の違いがはっきりと定められていた時代ですが、文芸や学問の世界では、武士と町人がお互いの身分を気にすることなく、同好の仲間として交流をしていました。特に狂歌の世界では、地域ごとにグループを作り、面白おかしい名前を名乗りあって活動していました。元木網(もとのもくあみ)、智恵内子(ちえのないし)、頭光(つむりのひかり)など、全くふざけた芸名が多々あります。まるで、ネット上で匿名で交流する、そんな21世紀の文化のあり方をすでに先取りしていたかのようです。その狂歌界で中心的な役割を担ったのが、四方赤良(よものあから)と名乗っていた大田南畝でした。

4.浮世絵師と狂歌師のコラボレーション

狂歌の世界は文芸という一つの枠に収まりません。喜多川歌麿や葛飾北斎など、浮世絵界の大物たちも狂歌の世界と密接に関わっていました。狂歌グループの仲間たちが浮世絵師に協力を依頼して、自分たちの狂歌の入った浮世絵や絵本をたくさん出版していたのです。浮世絵師の中には、自らグループに参加し、狂歌を楽しんでいるような人もいました。絵画と文芸、二つの異なるジャンルが結びついて新しい文化が花開いたのです。

葛飾北斎「富嶽図」(太田記念美術館蔵)・・・北斎と南畝の貴重なコラボレーション

葛飾北斎「富嶽図」(太田記念美術館蔵)
・・・北斎と南畝の貴重なコラボレーション

鳥文斎栄之「胡蝶の夢」(太田記念美術館蔵)・・・南畝は数多くの浮世絵に賛を求められた。

鳥文斎栄之「胡蝶の夢」(太田記念美術館蔵)
・・・南畝は数多くの浮世絵に賛を求められた。

5.教養=遊びの文化

大田南畝「墨水遊記」(個人蔵)・・・再発見された南畝直筆による隅田川の情景を詠んだ漢詩の巻

大田南畝「墨水遊記」(個人蔵)・・・再発見された南畝直筆による隅田川の情景を詠んだ漢詩の巻

ゆとり教育に端を発する学力低下が叫ばれる昨今、「教養」の価値が見直されています。しかし、幅広い知識を獲得したり、豊かな人格を育成したりすることだけが教養を持つ意味ではありません。江戸時代には、先に紹介したように、文学や絵画、歴史についての幅広い興味を持つ人たちがサークルを作り、真面目な和歌や絵画のパロディーを作って笑いあったり、謎解きをしあったり、さらには仲間内で本を作って出版したりと、お洒落な遊びをしていたのです。教養が遊びにつながる、そんな江戸時代の人たちの肩の力の抜けた姿勢は、現代人からみて学ぶところが多いでしょう。

6.浮世絵研究家・南畝

東洲斎写楽といえば、謎の浮世絵師として、その正体を解き明かそうとする人たちの興味を惹きつけて離しませんが、この東州斎写楽について語る際にまず引用されるのが、大田南畝の記した『浮世絵考証』という、浮世絵師についての記録です。南畝は、狂歌や狂詩といった娯楽の文芸だけでなく、江戸の歴史や文化について深い造詣を示し、それを考察した随筆を数多く記した学者としての側面も備えています。さらには、谷文晁や酒井抱一、亀田鵬斎といった江戸の一流の文化人とも親しく交流をしていました。南畝はまさしくマルチな才能を備えた人だったといえるでしょう。

7.新発見の資料を紹介

「大田南畝印譜」(大妻女子大学図書館蔵)

「大田南畝印譜」(大妻女子大学図書館蔵)

本展覧会では、新たに発見された南畝の肖像画や自筆の手紙、さらには、行方が分からなくなっていた南畝の書など、貴重な資料を多数紹介いたします。江戸文学の専門的な研究者にとっても見逃すことのできない重要な展覧会となることでしょう

「大田南畝印譜」(大妻女子大学図書館蔵)・・・南畝が用いていた判子を捺したもの 作品の真贋を見極める参考になる貴重な資料

料金
一般 1000円
大高生 700円
小中生 400円
開館日カレンダー
写真サンプル

江戸の祈りと呪い(まじない)

歌川広重 「名所江戸百景 目黒新冨士」
企画展
2008年7月1日(火)~7月27日(日)

※この展覧会の図録は作成していません。

三代歌川豊国 「江戸名所百人美女 あさぢがはら」・・・神棚に祈る女

三代歌川豊国 「江戸名所百人美女 あさぢがはら」・・・神棚に祈る女

江戸の一年をみると、ほぼ毎日のように開帳や祭礼など行事がありました。こうした多くの行事は、本来は信仰を目的としたものですが、実際は物見遊山など娯楽的な性格が強かったと考えられます。人々はこぞって富士山や江ノ島、伊勢神宮や讃岐の金毘羅へ参詣に向かい、非日常への旅を楽しんだようです。そのような憧れが、信仰にまつわる行事を描いた浮世絵にあらわれているといえるでしょう。そして、当時の風俗を伝える浮世絵には、お守りや願掛けの様子も描かれています。
こうしたさまざまな信仰が人々のくらしと密接に結びついていた江戸時代、その祈りと呪いの世界を、北斎や広重、歌麿、国貞らの浮世絵を通してのぞいてみませんか?
なお、会期中は、展示室に特設のおみくじや行灯が出現します。浮世絵の鑑賞とあわせてお楽しみいただき、当時の信仰や祭礼の雰囲気をご堪能いただければ幸いです。

1.年中行事と信仰

初詣や富士講、山王祭、神田祭、盆踊り、二十六夜待など、信仰に由来する江戸の年中行事を描いた浮世絵を紹介します。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 諸人登山」・・・富士山の噴火口を巡る「おはち参り」や岩室で休む様子がリアルに描かれている。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 諸人登山」
・・・富士山の噴火口を巡る「おはち参り」や岩室で休む様子がリアルに描かれている。

歌川広重 「名所江戸百景 目黒新冨士」・・・江戸市中には富士山を模した人工の富士塚が多く築かれ、6月1日の山開きには多くの参詣人で賑わった。

歌川広重 「名所江戸百景 目黒新冨士」
・・・江戸市中には富士山を模した人工の富士塚が多く築かれ、
6月1日の山開きには多くの参詣人で賑わった。

2.開帳と巡礼

歌川広重 「相州江之嶋弁才天開帳参詣群集之図」

歌川広重 「相州江之嶋弁才天開帳参詣群集之図」

浅草寺をはじめ各寺院が仏像を一般公開する開帳や、江ノ島詣や伊勢参、金毘羅詣といった巡礼の旅を浮世絵を通してみていきます。

歌川広重 「相州江之嶋弁才天開帳参詣群集之図」
・・・芸道上達の利益で有名な江ノ島の弁財天には、音曲の関係者が講を組んで参詣した。杵屋や常盤津、清元といった4組の講が揃いの日傘で参詣する様子が描かれている。

3.祈りと呪い(まじない)

お守り、切火といった魔よけ、神棚への祈りや願掛け祈願など、日常生活のなかでの祈りと呪いのようすが描かれた浮世絵を紹介します。
料金
一般700円
大高生500円
小中生200円
イベント
土曜講座・日曜映写会を開催します。
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親子でみる浮世絵通史第2回 錦絵ってなんだろう?

喜多川歌麿「五人美人愛嬌競 富本いつとみ」
企画展
2008年8月1日(金)~8月20日(水)

※この展覧会の図録は作成していません。

喜多川歌麿「菓子袋をもつ三美人」・・・キラキラ輝く女性たち

喜多川歌麿「菓子袋をもつ三美人」・・・キラキラ輝く女性たち

「浮世絵」と言えば、江戸時代を代表する日本の絵画で、その人気は広く海外にも知れ渡っています。浮世絵について詳しくないという方も、喜多川歌麿や葛飾北斎といった浮世絵師たちの作品を、本やテレビで一度くらいは目にしたことがあるでしょう。そんな親しみ深い浮世絵ですが、もし日本の文化に興味をもっている外国の友だちに、浮世絵ってどういう絵なの?とか、浮世絵ってどうやって作るの?と聞かれた時に、皆さんは何て答えるでしょうか?案外答えに困ったりしないでしょうか?
「親子でみる浮世絵通史」は、親子で分かりやすく浮世絵について学ぼうという展覧会です。昨年に続く第2回目の今回は、たくさんの色で摺られた鮮やかな木版画「錦絵」について、鑑賞のポイントや作り方のテクニックなどを分かりやすく解説しながら、知っているようで知らなかった浮世絵の秘密に迫ります。
初めて浮世絵に接する小学生や中学生の子どもたちはもちろん、浮世絵を今まで見たことがないという初心者の方々にも最適な展覧会です。

1.はじめての浮世絵 -小中学生のみなさんに

小学生や中学生の皆さんは、学校で浮世絵のことを教わる機会はほとんどないでしょう。一度も本物を見たこともないという子もいれば、中には昔の絵なんて古臭くて面白くも何ともないと思っている子もいるかもしれません。
しかし浮世絵は、私たちの先祖たちのことを知ることができるタイムマシーンのようなものです。浮世絵からは、昔の人がどういうファッションをしていて、どういうものが好きだったかなどということを知ることができます。しかもそのデザインや色は、時にはハッとするほど美しく、時には迫力にあふれ、今の私たちが見ても十分に楽しめるものなのです。
日本の文化を知るための最初の一歩として、まず浮世絵を見てみることから始めてみてはいかがでしょうか?

喜多川歌麿「扇子をもつ美人」・・・透き通る薄い着物も見事に再現

喜多川歌麿「扇子をもつ美人」
・・・透き通る薄い着物も見事に再現

溪斎英泉「夏景色美人会 朝顔の咲や六月」・・・蚊帳や着物の模様も細か

溪斎英泉「夏景色美人会 朝顔の咲や六月」
・・・蚊帳や着物の模様も細か

2.浮世絵の入門に最適の展覧会

これらの疑問は普段お客様から聞かれることの多い質問です。浮世絵と一口に言っても、案外分からないことはたくさんあると言えます。今回の展覧会は、浮世絵に対するそんな素朴な疑問を解決するのに最適の内容です。  

歌川豊国「六代目市川団十郎の荒獅子男之助」・・・かっこいい「顔」

歌川豊国「六代目市川団十郎の荒獅子男之助」
・・・かっこいい「顔」

喜多川歌麿「五人美人愛嬌競 富本いつとみ」・・・きれいな「顔」

喜多川歌麿「五人美人愛嬌競 富本いつとみ」
・・・きれいな「顔」

3.浮世絵版画の驚きのテクニックを紹介

浮世絵版画は、絵を描く浮世絵師だけでなく、版木を彫る彫師、絵の具を紙に摺る摺師といったさまざまな職人たちが協力して作り上げています。1ミリよりもさらに細かいものを彫る技術、あるいは淡い綺麗な色を画面全体にむらなく摺り上げる技術など、普段の浮世絵の展覧会では取り上げられることの少ない、職人たちの匠の技について、詳しく紹介いたします。  

溪斎英泉「契情道中双ろく 岡部 尾張屋内ゑにし」

溪斎英泉「契情道中双ろく 岡部 尾張屋内ゑにし」

溪斎英泉「契情道中双ろく 岡部 尾張屋内江仁志」

溪斎英泉「契情道中双ろく 岡部 尾張屋内江仁志」

料金
一般700円
大高生500円
小中生200円
イベント

夏期文化講座・日曜映写会を開催します。

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浮世絵 -ベルギーロイヤルコレクション展

葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」
企画展
2008年9月2日(火)~9月28日(日)
ベルギー王立美術歴史博物館とベルギー王立図書館は、ともに世界でも屈指の浮世絵コレクションを所蔵することで知られています。ベルギー王立美術歴史博物館の浮世絵は、1905年に収蔵されたエドモン・ミショット(1831~1913)のコレクションを中心とするものです。その後も長年にわたって収集が続けられ、現在ではその数約7500点以上におよびます。また、日本初公開となるベルギー王立図書館のコレクションは、19世紀末から収集された、500点を超す浮世絵からなります。
所蔵の点数から見れば、海外には約5万点を所蔵するアメリカのボストン美術館、約2万5000点を所蔵するイギリスのヴィクトリアアンドアルバート美術館のように、ベルギーを上回る規模のコレクションもいくつか見られます。しかし、ベルギー王立美術歴史博物館及び王立図書館のコレクションが優れている最大の特徴は、群を抜く素晴らしい保存状態にあります。浮世絵は色が劣化しやすく、江戸時代に摺られた当初の色彩を保つ作品は稀です。しかし両館の所蔵作品は、出版当初の、そして浮世絵本来の豊かな色彩をよく保ち、江戸の人々の感動を鮮やかに伝えてくれます。
本展ではコレクションの中から、日本初公開作品を数多く含む、厳選された約150点の作品を展観いたします。写楽、歌麿、春信、北斎、広重、国貞、国芳など、数多くの絵師の作品をバランスよく含み、最高のコンディションを保つ珠玉のコレクションをご堪能ください。
東洲斎写楽 「四代目岩井半四郎の鎌倉稲村が崎のおひな娘おとま実は楠政成女房菊水」

東洲斎写楽
「四代目岩井半四郎の鎌倉稲村が崎のおひな娘おとま
実は楠政成女房菊水」
(ベルギー王立図書館蔵)

東洲斎写楽 「三代目市川高麗蔵の廻国の修行者西方の弥陀次郎実は相模次郎時行」 

東洲斎写楽
「三代目市川高麗蔵の廻国の修行者西方の弥陀次郎
実は相模次郎時行」
(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

1.最高峰の写楽コレクション -世界に1枚しかない作品、新出作品-

東洲斎写楽 「二代目小佐川常世」(ベルギー王立図書館蔵)

東洲斎写楽 「二代目小佐川常世」(ベルギー王立図書館蔵)

わずか1年にも満たない活動期間に数多くの傑作を生み出した絵師、東洲斎写楽。世界一とも言われる、最高の保存状態を誇るベルギー王立図書館所蔵の写楽作品2点が日本初公開されるのをはじめ、前・後期あわせて14点の写楽作品が登場します。中でも注目は、世界中でベルギー王立美術歴史博物館に1点のみが所蔵される三代目市川高麗蔵の廻国の修行者西方の弥陀次郎実は相模次郎時行」と、同じくベルギー王立図書館所蔵の1点のみが確認される「四代目岩井半四郎の鎌倉稲村が崎のおひな娘おとま実は楠正成女房菊水」という2つの作品が、もともと同じ狂言に取材した組み物であり、本展で初めて同時に展示されるということでしょう。他にも世界に1点しか確認されていない作品として、大首絵「二代目嵐龍蔵の奴なみ平 とら屋虎丸」が出展されます。また、「二代目小佐川常世」「三代目坂東三津五郎の桂金吾春久」といった作品は、今回新たに所蔵が確認された新出作品として注目されます。最高の保存状態と合わせ、初公開、世界に1点、新出作品と、多くの話題性と魅力に富んだ最高峰の写楽コレクションをお楽しみください。

2.歌麿の美人画とちょっと意外な妖怪絵

美人画の第一人者として知られる絵師、喜多川歌麿。歌麿の作品はヨーロッパでも大変な人気を呼び、19世紀後半からはじまる日本美術の流行の中で、多くの作品がベルギー王立美術歴史博物館、王立図書館にも収蔵されました。本展では、歌麿の代名詞とも言える美人大首絵の名品として「当時三美人」などを展示いたします。また、歌麿が美人画とはかけはなれた、妖怪絵を手がけていたことはあまり知られていません。「見越入道」など、ユーモラスな妖怪たちを通じて、歌麿のちょっと意外な一面を紹介いたします
喜多川歌麿 「当時三美人」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

喜多川歌麿 「当時三美人」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

喜多川歌麿 「見越入道」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

喜多川歌麿 「見越入道」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

3.江戸の人々が驚いた!春信の色彩 -「座敷八景」「五常」-

浮世絵版画は、絵を描く浮世絵師だけでなく、版木を彫る彫師、絵の具を紙に摺る摺師といったさまざまな職人たちが協力して作り上げています。1ミリよりもさらに細かいものを彫る技術、あるいは淡い綺麗な色を画面全体にむらなく摺り上げる技術など、普段の浮世絵の展覧会では取り上げられることの少ない、職人たちの匠の技について、詳しく紹介いたします。
鈴木春信 「五常 義」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

鈴木春信 「五常 義」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

鈴木春信 「座鋪八景 鏡台の秋月」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

鈴木春信 「座鋪八景 鏡台の秋月」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

4.北斎と広重 -風景画の巨匠たち-

江戸時代後半、庶民の旅への関心の高まりとともに、浮世絵にも風景画のブームが訪れます。その立役者となったのが、90歳まで生き、常に斬新な表現を試みつづけた絵師、葛飾北斎と、穏やかで詩的な風景表現を得意とした絵師、歌川広重です。 本展では、北斎の代表作として知られる「冨嶽三十六景」シリーズから、「凱風快晴」「駿州片倉茶園ノ不二」などの作品を紹介。また、広重の3枚続きの大作「武陽金沢八勝夜景」や、有名な「東海道五拾三次之内」シリーズの中でも特に傑作とされる「庄野 白雨」など、巨匠たちの優れた風景画を多数展観いたします。
歌川広重 「武陽金沢八勝夜景」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

歌川広重「武陽金沢八勝夜景」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

葛飾北斎 「冨嶽三十六景 凱風快晴」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」
(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

5.大人気役者絵師 国貞の出世作 -「大当狂言之内」-

歌川国貞 「大当狂言之内 菅丞相」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

歌川国貞「大当狂言之内 菅丞相」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

江戸庶民の大きな娯楽、歌舞伎。美人とともに、人気役者は浮世絵でもっとも良く描かれるテーマです。中でも歌川国貞は、浮世絵最大の画派、歌川派の中核をなし、江戸時代後半から幕末にかけて役者絵の分野でもっとも人気のあった絵師です。本展では、国貞が30歳を目前にした頃の出世作「大当狂言之内 菅丞相」を展示いたします。一流の人気絵師へと駆け上って行く時期の、野心や勢いを感じとれる大迫力の一枚です。  

6.まるでアニメーション? 国芳のユーモアあふれる戯画 -「金魚づくし」-

擬人化され、生き生きした表情で泳ぎ回る金魚たち。それを舌なめずりしながら眺める恐ろしげな猫。まるで現代のアニメーションを思い起こさせるような楽しい戯画「金魚づくし 百ものがたり」を描いたのは、武者絵や風景画でも有名な絵師、歌川国芳です。本展では、国芳による「金魚づくし」シリーズを多数ご紹介いたします。現代にも十分通じる、国芳の卓越したユーモアのセンスを感じていただければ幸いです。
歌川国芳 「金魚づくし 百ものがたり」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

歌川国芳「金魚づくし 百ものがたり」
(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

歌川国芳 「金魚づくし にはかあめんぼう」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

歌川国芳「金魚づくし にはかあめんぼう」
(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)

料金
一般1000円
大高生700円
小中生400円
開館日カレンダー
カレンダー

国貞・国芳・広重とその時代 -幕末歌川派の栄華-

歌川国芳「近江の国の勇婦於兼」
企画展
2008年10月1日(水)~11月26日(水)
前期:2008年10月1日(水)~10月26日(日)
後期:2008年11月1日(土)~11月26日(水)
※前後期展示替えあり

※10月・11月の展覧会図録は販売致しません。

役者絵や美人画を数多く描いた人気絵師、歌川国貞(1786~1864)。武者絵や、ユーモアにあふれた戯画で知られる奇才、歌川国芳(1797~1861)。名所絵の巨匠として、江戸の風景を数多く写し取った絵師、歌川広重(1797~1858)。3人は、浮世絵を代表する絵師として広く知られています。またその名前が示すとおり、江戸後期から幕末にかけて浮世絵界で隆盛を誇った「歌川派」に属する絵師でもあります。歌川派は、歌川豊春(1735~1814)をその開祖とし、弟子である初代歌川豊国(1769~1825)と歌川豊広(?~1829)たちは、役者絵や美人画、版本の挿絵などの分野で人気を得て、歌川派隆盛の基礎を築きます。今回の展示のテーマとなる、国貞、国芳、広重は初代豊国、豊広の弟子たちで、いわば歌川派の第3世代の絵師といえるでしょう。
巨匠として並び称される国貞、国芳、広重。国貞が年長であるものの、3人はほぼ同じ時代を生き、同じ流派の中でお互いに競いあって、一流の絵師へと上り詰めました。それぞれが数多くの弟子をその門下に抱え、幕末には歌川派の黄金時代とも言える時代を生み出したのです。
本展では前期・後期あわせて約170点の作品を展観し、移り変わる時代や周囲の環境の中で、3人が絵師としてどのように生き抜いていったのか、そして3人とともに、歌川派という流派がどのように成長していったのかをわかりやすく展示いたします。多数の錦絵を通して、江戸後期から幕末へと続く時代の雰囲気や、歌川派の隆盛の様子を感じ取っていただければ幸いです。
(1) 歌川国貞「さかい町 中村座楽屋之図」

(1) 歌川国貞「さかい町 中村座楽屋之図」

1.3人の修行時代 -豊国・豊広への入門-

(2) 歌川広重「青野ヶ原ニ熊坂手下ヲ集ム」

(2) 歌川広重「青野ヶ原ニ熊坂手下ヲ集ム」

役者絵の世界で絶大な人気を誇った初代歌川豊国と、美人画や版本の挿絵などで名を成した歌川豊広。国貞・国芳・広重3人の画業は、歌川派の2人の絵師に入門することから始まります。国貞と国芳は初代歌川豊国の門下となり、広重も初代豊国の門を叩きますが、定員オーバーのため断られ、豊広への入門を決めたといわれています。本コーナーでは、初代豊国、豊広という師匠のもとで修行に励んだ、3人の文化文政年間(1804~1830)の作品を中心に展示いたします。国貞筆「さかい町 中村座楽屋之図」(3枚続)、広重筆「青野ヶ原ニ熊坂手下ヲ集ム」
(3枚続)など、まだ独自の画風を確立する前の、3人
の作品にご注目ください。

2.師匠の死 -それぞれの画風の展開-

文政8年(1825)には初代豊国が、文政12年(1829)には豊広が相次いで亡くなります。国貞・国芳・広重にとって師匠の死が、絵師としての心構えや、表現の方向性を決めさせる重要な転機となったことは想像に難くありません。すでに人気の絵師となっていた国貞は初代豊国の死後、「香蝶楼」という新しい号を用いだし、精力的に作品を発表します。国芳は、文政10年(1827)頃から手がけた武者絵が人気を呼び、ようやく絵師として軌道に乗り始めました。広重は豊広の死後、天保初期に名所絵「東都名所」を発表、すぐ後に代表作「東海道五拾三次之内」を手がけ、風景画家としての道を歩み始めます。本コーナーでは、国芳筆「近江の国の勇婦於兼」、広重筆「東海道五拾三次之内 三島」など、師匠亡き後、3人が独自の画風を展開する天保年間(1830~44)の作品を中心にご紹介します。
歌川国芳「近江の国の勇婦於兼」

(3) 歌川国芳「近江の国の勇婦於兼」

歌川広重「東海道五拾三次之内 三島」

(4) 歌川広重「東海道五拾三次之内 三島」

3.天保の改革 -浮世絵への統制-

老中水野忠邦によって行われた江戸時代の3大改革の一つ、天保の改革。天保の改革は、歌舞伎や寄席など、文化への厳しい規制や弾圧で知られますが、浮世絵にもその矛先は向けられました。天保13年(1842)6月に出された出版統制令では、遊女を題材とすることや、歌舞伎役者の似顔、名前、紋などを浮世絵に描くことが禁じられます。浮世絵師たちは苦境に立たされますが、画題を変え、あるいはカムフラージュし、浮世絵の出版は続けられました。本コーナーでは、国貞筆「歳暮の深雪」、国芳筆「盤上太平棊」など、天保の改革による出版統制がもっとも厳しかった、天保14年から弘化年間(1843~1848)頃の作品を中心に展示いたします。
(5) 歌川国貞「歳暮の深雪」

(5) 歌川国貞「歳暮の深雪」

(6) 歌川国芳「盤上太平棊」

(6) 歌川国芳「盤上太平棊」

4.浮世絵師としての大成 -幕末歌川派の栄華-

天保の改革のほとぼりが徐々に冷めてくるのにあわせ、3人はそれぞれの分野で精力的に作品を発表し、浮世絵師として大成していきます。国貞は弘化年間初めに豊国の号を襲名し(三代豊国)、名実ともに歌川派の総帥の座につきました。国芳は、戯画などを数多く手がけ、個性的な作風で人気を呼びます。広重は、名所絵の大家としての地歩を固め、晩年にはその集大成とも言える「名所江戸百景」を手がけました。本コーナーでは、国芳筆「人かたまつて人になる」、広重筆「名所江戸百景 鎧の渡し 小網町」など、3人が歌川派を、そして浮世絵を代表する大家となっていく弘化年間(1844~1848)からその死までの作品を中心に展示いたします。
(7) 歌川国芳「人かたまつて人になる」

(7) 歌川国芳「人かたまつて人になる」

(8) 歌川広重「名所江戸百景 鎧の渡し 小網町」

(8) 歌川広重「名所江戸百景 鎧の渡し 小網町」

5.三代豊国のライフワーク-「嘉無路喜久(かむろぎく)」と晩年の役者大首絵-

50年以上に渡って役者絵を描き続けた絵師、国貞(三代豊国)。その役者絵への情熱は晩年になっても衰えず、数十枚に及ぶ役者絵大首絵のシリーズものを精力的に手がけます。また晩年の三代豊国が、豪商八代目紀伊国屋長三郎をパトロンとし、版元恵比寿屋庄七(えびすやしょうしち)とともに深い交流を結び、役者大首絵などの作品を数多く制作していたという興味深い事実が、近年の研究で明らかになりつつあります。そして、当館に所蔵される「嘉無路喜久 (かむろぎく)」という役者大首絵の下絵集が、その交流の一端を示す新資料であることが最近明らかとなりました。本コーナーでは、「嘉無路喜久 (かむろぎく)」を展示するほか、当時の役者大首絵として、東海道の各宿場を背景に役者を描いた「役者東海道」シリーズなどの作品をご紹介します。
(9) 三代豊国「嘉無路喜久」より「五代目市川海老蔵の天川屋義平」

(9) 三代豊国「嘉無路喜久」より
「五代目市川海老蔵の天川屋義平」

(10)三代豊国「東海道五十三次の内 箱根 初花」

(10)三代豊国「東海道五十三次の内 箱根 初花」

料金
一般700円
大高生500円
小中生200円
イベント
10月・11月の土曜講座・日曜映写会は開催致します。
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源氏物語誕生1000年記念 浮世絵の中の源氏絵

歌川広重「江戸むらさき名所源氏 見立浮ふね」
企画展
2008年12月2日(火)~21日(日)

※この展覧会の図録は作成していません。

現代でもさまざまな形で読み継がれる不朽の名作、源氏物語。今年は、源氏物語の存在が記録として確認されてから、ちょうど1000年という節目の年を迎え、日本各地でそれを祝うイベントや記念事業、展覧会などが行われています。もちろん江戸時代の人々にも源氏物語は広く知られていました。そして、庶民向けに作られた浮世絵においても、源氏物語の世界を絵画化した作品、あるいは、源氏物語から発想を得た作品が生み出されました。その中には一見、源氏物語とは関わりがないように見える作品まであります。本展覧会では、浮世絵における「源氏絵」というジャンルを通して、江戸時代の庶民たちがどのように源氏物語の世界に接していたのかを紹介します。

1.浮世絵師たちが描く王朝世界

江戸時代において、狩野派や土佐派など、支配者層と関わりの深い流派の絵師たちは、屏風や掛軸など、さまざまな形で源氏物語の世界を描いていました。それに対し、庶民たちに向けて絵を描く浮世絵師たちも、決して数が多いとは言えませんが、源氏物語の世界をいくつか手がけています。葛飾北斎や歌川広重らが描いた王朝世界の作品をご覧ください。
月岡芳年「月百姿 石山月」

月岡芳年「月百姿 石山月」

葛飾北斎「源氏物語図」

葛飾北斎「源氏物語図」

2.背後に隠された源氏物語

浮世絵では、源氏物語の場面をそのままに描くのではなく、物語の登場人物を江戸時代の庶民の姿に置き換えて表現する、「見立て」、もしくは「やつし」と呼ばれるパロディーのような手法がしばしば用いられました。源氏物語の世界をどのように当時の人々の姿に重ね合わせているか、その発想の豊かさをご覧ください。
鳥文斎栄之「浮世源氏八景 松風夜雨」

鳥文斎栄之「浮世源氏八景 松風夜雨」

歌川広重「江戸むらさき名所源氏 見立浮ふね」

歌川広重「江戸むらさき名所源氏 見立浮ふね」

3.これが源氏物語? 大ベストセラー小説『偐紫田舎源氏』の世界

浮世絵において「源氏絵」と言った場合、厳密には『偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)』を題材にした作品のことを指します。『偐紫田舎源氏』とは、19世紀前半に刊行された柳亭種彦による物語で、源氏物語のあらすじをベースにしつつ、室町時代のお家騒動に仕立てた源氏物語の翻案小説です。この作品は江戸っ子たちの人気を集めて大ベストセラーとなり、『偐紫田舎源氏』を題材にした浮世絵が数多く出版されました。現代ではすっかり忘れ去られてしまった、江戸時代の庶民たちならではの源氏物語の楽しみ方をご覧ください。
三代歌川豊国「源氏見立八景之内 夕霧落雁」

三代歌川豊国「源氏見立八景之内 夕霧落雁」

三代歌川豊国「奥御殿遊楽之図」

三代歌川豊国「奥御殿遊楽之図」

料金
一般700円
大高生500円
小中生200円
イベント
「浮世絵を聴く」(三味線、笙などによる日本音楽演奏会)を開催いたします
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招福扇絵展 -末広がりなおめでたさ・鴻池コレクションより-

英一珪「高砂に丹頂と瑞亀」
企画展
2009年1月3日(土)~25日(日)

1月5・13・19日は休館となります。

※この展覧会の図録は作成していません。

扇は、暑さをしのぐための実用品としてはもとより、日々の生活のアクセサリー、儀礼や芸能の場で用いる道具など、さまざまな形で日本人に用いられてきました。また、その形状が「末広がり」を連想させることから、古来、縁起のよいものとして親しまれています。同時に、扇に絵を描く「扇絵」は絵画表現の一形式でもあり、数多くの絵師によって、扇はさながらキャンバスのように美しく彩られてきたのです。
扇は破損しやすいため、現存している数は、当時の数と比べればごく僅かなものに過ぎません。その中で、大阪の豪商・鴻池家から譲り受けた当館の扇絵コレクションは、浮世絵派、琳派、土佐派、狩野派、円山四条派など、近世に活躍したさまざまな流派の絵師たちの作品900点以上を所蔵しており、扇絵の歴史を語る上で欠かすことができない貴重なものとなっております。
本展覧会では、鴻池コレクションのなかから、七福神や松竹梅、鶴や亀といった、縁起の良いテーマを描いた扇を集め、展観いたします。「末広がり」の扇を彩った、さまざまな絵師による扇絵の数々。二重におめでたい、正月にぴったりの展示をお楽しみください。

1.めでたい風俗 -五節句を中心に-

柳々居辰斎 「凧あげ(式亭三馬賛)」

柳々居辰斎 「凧あげ(式亭三馬賛)」

歌川豊広 「女万歳」

歌川豊広 「女万歳」

2.福の神 -招福を願って-

谷文晁 「恵比寿 大黒天」

谷文晁 「恵比寿 大黒天」

山口素絢 「寿老」

山口素絢 「寿老」

3.松竹梅

狩野探幽「梅に小禽」

狩野探幽「梅に小禽」

4.鶴亀

英一珪「高砂に丹頂と瑞亀」

英一珪「高砂に丹頂と瑞亀」

月僊 「亀」

月僊 「亀」

5.霊峰冨士 -日本固有の吉祥シンボル-

司馬江漢「自相州大山頂望富嶽」

司馬江漢「自相州大山頂望富嶽」

料金
一般700円
大高生500円
小中生200円
イベント
1月の土曜講座・日曜映写会を開催致します。
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北斎・広重からの華麗なる展開 第三回 牧野宗則展
同時開催 太田記念美術館収蔵品展

「まほろば」
企画展
2009年2月1日(日)~26日(木)

2月2・9・16・23日は休館となります。

牧野宗則氏は、日本が世界に誇る浮世絵木版画の彫りや摺りの技術を修得し、かつては絵師、彫師、摺師が分業にしていた全ての工程をたった一人で手掛けている現代木版画家です。北斎や広重といった江戸の浮世絵師たちの精神を受け継ぎつつも、その高度なテクニックによって自然の生命の輝きを色鮮やかな木版画で表現している牧野氏は、まさしく伝統と革新の両面を備えた稀有な存在であり、2003年には文化庁長官表彰を受賞するなど内外で高い評価を得ています。
太田記念美術館では過去2回にわたり牧野宗則氏の展覧会を開催してきました。浮世絵を専門に扱う当館では現代作家の作品を扱うことは基本的に無く、当時のお客様の中には驚かれた方もあったようです。しかしながら、伝統を誇る浮世絵版画の技術と芸術性を追求する創作版画の精神を見事に融合させた牧野氏の活動は、我が国の木版画芸術の将来を考える貴重な指針であり、展覧会を通じて多くの皆様にご鑑賞いただく意義もそこにあろうかと確信しております。
第3回となる今回の展覧会では、「秋の声」(2006年)「まほろば」(2008年)など、前回の展覧会以降に制作された木版画を中心に展示するとともに、色鮮やかな版木を組み合わせた「ブロックス・アート」という新たな境地の作品もあわせて公開いたします。さらなる創意工夫を重ねて進化を繰り広げていく牧野宗則氏の美の世界をお楽しみください。
「秋の声」(2006年)

「秋の声」(2006年)

「夢咲き森」(2005年)

「夢咲き森」(2005年)

「華の風」(1998年)

「華の風」(1998年)

「心に渡る風」(2002年)

「心に渡る風」(2002年)

「まほろば」(2008年)

「まほろば」(2008年)

『同時開催 太田記念美術館収蔵品展』

葛飾北斎「富嶽三十六景 凱風快晴」

葛飾北斎 「富嶽三十六景 凱風快晴」

展覧会会期中、太田記念美術館の収蔵品を同時公開いたします。牧野氏の出発点ともいえる、北斎、広重など、江戸の浮世絵師たちによる高度な浮世絵版画の世界をお楽しみください。
料金
一般700円
大高生500円
小中生200円
イベント
2月の土曜講座・日曜映写会は開催しません。
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生誕170年記念 楊洲周延展

「東絵昼夜競  玉藻前」
企画展
2009年3月1日(日)~26日(木)

3月2・9・16・23日は休館となります。

※この展覧会の図録は作成しておりません。

明治に活躍した浮世絵師、楊洲周延(ようしゅう・ちかのぶ)。新時代の到来を思わせる色鮮やかな作風で、当時は月岡(大蘇)芳年や小林清親らに次ぐ人気の浮世絵師でした。明治時代を迎えた女性 たちの新しい風俗や過ぎ去りし徳川幕府の武士たちの生活などを得意としており、歴史資料としても貴重な作品群となっています。 本展では楊洲周延の画業を紹介し、明治の浮世絵がもつ新鮮な魅力をお伝えいたします。
「欧洲管弦楽合奏之図」 明治22年

「欧洲管弦楽合奏之図」 明治22年

1.新時代を迎えた女性たち

明治維新により新しい時代を迎えた日本は、庶民たちの暮らしも大きく様変わりさせていきました。周延は、身分の高い皇族たちの生活の一場面や、洋服に身をつつむ女性たちの姿など、新しい時代の風俗を好んで取り上げています。時代の流行を敏感に捉えようとする浮世絵師ならではの周延の姿をご紹介します。
「時代かがみ 明治 慈善会」 明治30年

「時代かがみ 明治 慈善会」 明治30年

「真美人 十四 洋傘をさす女学生」 明治30年

「真美人 十四 洋傘をさす女学生」 明治30年

2.過ぎ去りし江戸へのノスタルジー

周延は単なる武士であっただけでなく、彰義隊とともに上野戦争、さらには函館戦争にも参加するという、浮世絵師としては非常に稀有な経歴をたどりました。明治時代になってから、その経歴を生かしてか、江戸城における武士たちの生活や行事の様子を絵画化しました。かつては絶対に描くことが許されなかったそれらのテーマは、一般庶民たちの好奇心を集めましたが、その陰には周延自身の過ぎ去りし徳川時代への郷愁がひそんでいるのでしょう。
「温故東の花 第三篇 旧幕府御大礼之節町人御能拝見之図」 明治22年頃

「温故東の花 第三篇 旧幕府御大礼之節町人御能拝見之図」 明治22年頃

「江戸風俗十二ヶ月之内 七月 七夕筋違見附八辻」明治22年

「江戸風俗十二ヶ月之内 七月 七夕筋違見附八辻」明治22年

3.静謐なる歴史物語世界

周延は歴史故事や物語、芝居を題材にした作品を描いています。臨場感溢れるように描くその表現は、静謐な雰囲気だけでなく、一種の妖艶さをも漂わせています。同時期に活躍していた月岡(大蘇)芳年との比較の上からも、今後注目すべき周延の画業と言えるでしょう。
「東絵昼夜競  玉藻前」明治19年

「東絵昼夜競 玉藻前」明治19年

「東絵昼夜競  足柄金時侍」明治19年

「東絵昼夜競 足柄金時侍」明治19年

料金
一般700円
大高生500円
小中生200円
イベント
3月の土曜講座・日曜映写会は開催します。
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