太田記念美術館収蔵品展

歌川広重「江戸むらさき名所源氏 見立 あかし 高輪の月」
企画展
2011年1月4日(火)~1月26日(水)

1月11・17・24日は休館となります。

※展覧会の図録は作成いたしません。

はじめに

今回の収蔵品展では、「市井の風俗を描く」「古典を描く」「顔を描く」とする三部構成とし、通常のテーマごとの展示ではあまり紹介されることのない作品を中心に展観いたします。本展を機会に太田記念美術館が有するコレクションの魅力を、より深くお楽しみいただければ幸いです。

1.市井の風俗を描く

市井の風俗を描く作品の中から、戦国時代に制作された「洛外名所図」を中心に、庶民の生活を捉えた江戸時代の浮世絵を含めご紹介いたします。それぞれの時代を力強く生きる、人々の活気ある姿をご覧ください。
「洛外名所図屏風」(6曲1双)

「洛外名所図屏風」(6曲1双)多くの参詣者でにぎわう清涼寺周辺。

室町時代から江戸時代前期にかけて、京都の市街地および郊外の様子をそこに暮らす人々の生活とともに描く「洛中洛外図」が多く制作されました。当館所蔵の「洛外名所図屏風」もその一つです。寺社に参詣する人々、仕事に精を出す人々などが数えきれないほど描かれた画面にはエネルギーが溢れています。本図は京都郊外の名所を中心に描く点が珍しく、また、鉄砲の試し撃ちをしている場面が確認できることなどから、制作時期が天文14年(1545)頃と推定され、16世紀に制作された数少ない洛中洛外図としても重要な一点です。
鉄砲の試し撃ちをする武士。

鉄砲の試し撃ちをする武士。

葛飾北斎 「千絵の海 待チ網」

葛飾北斎 「千絵の海 待チ網」

葛飾北斎 「千繪の海 下総登戸」

葛飾北斎 「千繪の海 下総登戸」

葛飾北斎 「千繪の海 甲州火振」

葛飾北斎 「千繪の海 甲州火振」

2.古典を描く

浮世絵において人気の歌舞伎役者や美しい女性など、当時の流行の風俗を描くことはとても重要でした。しかし一方で『源氏物語』や『三国志』をはじめとする、日本や中国の古典世界をふまえた作品も多く見られます。時代の流行と古典世界とを自由に行き来する、江戸の人々の豊かな発想力をお楽しみください。

(1)浮世絵にひそむ雅(みやび)-日本の古典-

菱川師継「やつし伊勢物語河内越」

菱川師継「やつし伊勢物語河内越」

『伊勢物語』「筒井筒(つついづつ)」の次の場面に取材した作品です。他の女性のもとに通う夫を機嫌よく送り出す妻に対して、妻の浮気を疑う夫は、一旦家を出た後、庭先に身を潜めて妻の様子をうかがいます。一人になった妻は夫の無事を気遣う和歌を口にし、その姿に夫は胸をうたれるのでした。本図ではこの貞淑な妻を、流行の着物に身を包んだ遊女に置き換えて描いています。

歌川広重「江戸むらさき名所源氏 見立 あかし 高輪の月」

歌川広重「江戸むらさき名所源氏 見立 あかし 高輪の月」

『源氏物語』を題材に江戸の名所を描いたシリーズ。配流となった光源氏は明石の地で、十三夜の日に明石の君と結ばれます。本図では、江戸の月の名所として知られた高輪と、平安時代の光源氏と明石の君との恋物語が重ねられているのです。

(2)浮世絵のなかの異国-中国の古典-

北尾重政「やつし八景 堅田落雁」

北尾重政「やつし八景 堅田落雁」

いたずらっこが少女の琴の稽古を邪魔しています。少年は奪った琴柱(ことじ)をこたつの上からばらまいています。実はこの琴柱は、源泉を中国山水画の「瀟湘八景」にさかのぼることができます。中国の洞庭湖周辺の美しい8つの景色を描くこの画題は日本でもさかんに描かれました。落下する琴柱には、「瀟湘八景」に登場する飛来する雁の姿が重ねられているのです。江戸っ子は中国の伝統的な画題さえ身近な情景に取り込んでしまいました。

鳥文斎栄之「七賢人略(やつし)美人新造揃 てうしや内 とき哥」

鳥文斎栄之「七賢人略(やつし)美人新造揃 てうしや内 とき哥」

本を読む、若く美しい新造(見習遊女)。実在する七人の新造を、中国の竹林に集まって清談を行った7人の賢人「竹林七賢」になぞらえたシリーズの一図です。背後の屏風に何気なく描かれた水墨画の竹も、遊郭を舞台に生きる新造と中国の賢人という、まったく異なる両者を結びつける重要なモチーフなのです。

3.顔を描く

渡辺崋山「芭蕉肖像真蹟」

渡辺崋山「芭蕉肖像真蹟」

いかめしい顔の老人を描く肖像画、あるいは美しく理想化された役者の顔。江戸時代はさまざまな顔が描かれた時代でもありました。当時の人々の顔を描くことへの関心に触れながら、どんな顔に出会えるか楽しみながらご覧ください。

渡辺崋山「芭蕉肖像真蹟」
6人の高名な俳人を描いたシリーズのうちの一図。芭蕉は穏やかな表情ながらも、眼には鋭さも湛えています。横には笠をくくりつけた杖があり、旅を愛した俳人のイメージがよく伝えられています。

<見どころの一点>
歌川国芳「通俗三国志之内 孔明六擒孟獲」(つうぞくさんごくしのうち こうめいむたびもうかくをとりこにす) 

歌川国芳「通俗三国志之内 孔明六擒孟獲」
二人の武将と戦う馬上の女性。これは小説『三国志演義』に登場する祝融夫人(しゅくゆうふじん)を描いたものです。南蛮の王、孟獲(もうかく)の妻である祝融夫人は、夫が蜀の諸葛亮との戦に何度も負けたことに怒り、夫の代わりに蜀軍と対峙し、蜀の武将である張嶷と馬忠を一騎打ちの末に捕らえます。本図は、この祝融夫人と二人の武将との戦いの場面を描いています。夫人の衣服や馬には、国芳が西洋画から学んだ陰影が付けられ、あたかも油絵のようにも見えます。中国の小説の逸話を西洋風の画風で描くことで、よりエキゾチックな印象を与える作品となっています。
入館料
一般700円
大高生500円
中学生以下無料
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