コレクション17

葛飾北斎 冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏

横大判錦絵 25.7×38.0㎝ 天保2年(1831)頃

 「冨嶽三十六景」は、場所、あるいは季節や天候によってさまざまな表情を見せる富士山を主題にした揃物。当初は「三十六景」という題名通り、36点の刊行を意図していたのであろうが、売れ行きが好評だったようで、10点が追加され、シリーズの総数は46点となっている。
山のように高く迫り上がった巨大な波が、今まさに崩れ落ちようとする瞬間を描く。押し送り船に乗る者たちに為す術はなく、ただ船にしがみついて大自然の凶暴さに身をまかせるだけである。その波の向こうには雪をかぶった富士山の姿が垣間見える。一見、色も形も波とよく似ているが、富士山という存在に親しむ我々が見れば、荒れ狂う波と鎮座する富士という、北斎の仕掛けた動と静のダイナミックな対比というものを味わうことができよう。北斎の代表作であるのみならず、世界で最も知られている日本絵画の一つに数えられる作品で、西洋に広く影響を与えている。

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