コレクション14

歌川国貞 星の霜当世風俗 蚊やき

大判錦絵 38.9㎝×26.3㎝ 文政2年(1819)頃

 茣蓙にひざまずいた女性が手に持つのは、火のついた紙蝋。その視線の先には一匹の蚊が止まる。蚊帳の中に紛れ込んだ蚊を火で退治しようとするところである。本図は国貞の代表作として知られる美人画の揃物のうち一点。現在までに10点が確認される。女性の日常の一場面を巧みに描き、人物、背景ともに精緻な描写を見せる。蚊帳の下に置かれた団扇に描かれるのは、助六を演じる三代目尾上菊五郎である。文政2年(1819)3月中村座大切「助六曲輪菊(すけろくくるわのももよぐさ)」に取材したもの。本狂言は市川家の家の芸である助六を、菊五郎が団十郎への挨拶なしに演じたため、以降数年間にわたる両者不和の原因となった舞台でもある。

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