コレクション12

東洲斎写楽 初代市川鰕蔵の竹村定之進

大判錦絵 37.6×24.5㎝ 寛政6年(1794)5月

 東洲斎写楽が寛政6年5月に蔦屋重三郎から版行した役者大首絵二八枚のうち一点。市川鰕蔵演じる竹村定之進を描く。寛政6年(1794)5月河原崎座「恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたづな)」に取材。竹村定之進は由留木家に勤める能役者の役である。不義を犯した娘の重の井の助命を請うため、主君から求められていた道成寺の所作の伝授を行い、切腹する。市川鰕蔵の前名は五代目市川団十郎。明和7年(1770)11月に団十郎を襲名して以来、江戸歌舞伎を牽引し、役者絵にも数多く描かれてきた江戸を代表する名優である。写楽の描く鰕蔵は従来の似顔表現を基本的には踏襲しつつも、独自の誇張を加え、ある種の異様さを湛えた印象的な描写となっている。

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