鏑木清方と鰭崎英朋 近代文学を彩る口絵 ―朝日智雄コレクション

2021年5月21日(金)~6月20日(日)  

5月24日、31日、6月7日、14日は休館します。

知られざるライバル―鏑木清方(かぶらき・きよかた)と鰭崎英朋(ひれざき・えいほう)

2019年、「築地明石町」が再発見されたことが話題となった鏑木清方(1878~1972)。日本画家として今でも広く知られていますが、明治30年代後半から大正5年頃にかけては、文芸雑誌や小説の単行本の口絵というジャンルで活躍していました。その時、清方と人気の双璧をなしていたのが、鰭崎英朋(1880~1968)です。清方と英朋は、月岡芳年の系譜に連なると共に、烏合会という美術団体に属した友人同士でもありました。清方と英朋による、明治の美しい女性たちを描いた口絵の名品を紹介します。

鏑木清方 菊池幽芳・著『百合子 後編』口絵 大正2年(1913) (C)Akio Nemoto

鏑木清方 菊池幽芳・著『小ゆき 後編』口絵 大正2年(1913)  (C)Akio Nemoto

鰭崎英朋 柳川春葉・著『誓 前編』口絵 大正4年(1915)
鰭崎英朋 柳川春葉・著『誓 中編』口絵 大正6年(1917)

知られざる超絶技巧の木版画

明治20年代後半から大正初期にかけて、文芸雑誌や小説の単行本の巻頭には、木版による口絵が付されました。物語の世界を華やかに彩る木版口絵は、江戸時代から続く浮世絵版画の系譜に連なるだけでなく、江戸の技術を遥かに上回る精緻な彫りや摺りが施されています。しかしながら、現在の浮世絵研究ではほとんど顧みられることがなく、忘れられたジャンルとなってしまいました。木版口絵のコレクターである朝日智雄氏の所蔵品の中から約110点を厳選し、歴史に埋もれた口絵の美しさにスポットをあてます。

鏑木清方 小杉天外・著『にせ紫 後編』口絵 明治38年(1905)  (C)Akio Nemoto

鰭崎英朋 泉斜汀・著『深川染 前編』口絵 明治40年(1907)

知られざる挿絵画家たち―桂舟、永洗、年方、半古

文芸雑誌や小説の単行本の巻頭に付された口絵は、明治20年代後半頃から、さまざまな絵師たちによって手掛けられ、その人数は100人以上におよびます。清方や英朋が登場する以前、人気を誇っていた絵師を挙げるとするならば、武内桂舟(1861~1943)、富岡永洗(1864~1905)、水野年方(1866~1908)、梶田半古(1870~1917)でしょう。中でも、水野年方は鏑木清方の師匠であり、清方の画業を考える上で欠かすことのできない人物です。清方や英朋と共に、4人の知られざる挿絵画家たちについてご紹介します。

武内桂舟 「美人撲蛍」(『文芸倶楽部』第3巻10編口絵) 明治30年(1897)
富岡永洗 水谷不倒・著『枯野の真葛』口絵 明治30年(1897)
梶田半古 「菊のかをり」(『文芸倶楽部』第11巻第13号口絵) 明治38年(1905)

水野年方 村上浪六・著『当世五人男のうち 倉橋幸蔵 続編』口絵 明治35年(1902)

見どころの作品

鰭崎英朋 泉鏡花・著『続風流線』口絵 明治38年(1905)

泉鏡花の小説『続風流線』の巻頭に付された口絵です。竜巻に襲われて船が転覆し、湖に落ちた美樹子を、多見治が救助する場面を描いています。画面いっぱいに流れる水が描かれ、水の中の2人の体がうっすらと見えるという、斬新な構図と高度な摺りの技法が兼ね備えられた作品です。
泉鏡花と鏑木清方の関係はさまざまに紹介されていますが、鰭崎英朋も泉鏡花と深いつながりがありました。鏡花の小説に多くの挿絵を描いているだけでなく、個人的な親しい交流もしていました。

新型コロナの影響で中止になった展覧会が復活

本展覧会は、昨年2月に開催しましたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、会期を3週間以上残しながらも途中で開催中止となってしまいました。しかしながら、これまでスポットの当たってこなかった絵師や作品を、どうしても多くの人にご覧いただきたいという学芸員の思いから、展示スケジュールを調整し、再び同じ内容で開催することにいたしました。こだわりの展覧会、ぜひお見逃しなく。


入館料
一般1000円
大高生700円
中学生以下無料

*中学生以上の学生は学生証をご提示下さい。
団体(10名以上)は1名さまあたり100円引き。(一括にてお支払い願います。事前のお申し込みにご協力ください。)新型コロナウイルス感染症の感染予防と拡大防止のため、当面の間は10名以上の団体でのご来館はご遠慮ください。
*障害者手帳提示でご本人とお付き添い1名さま100円引き。
*その他各種割引についてはお問い合わせください。
*料金は消費税込み。

開館日カレンダー

休館日

2021 05

休館日

6,10,17-20,24,31

2021 / 05

6,10,17-20,24,31

SUN MON TUE WED THU FRI SAT
2021 06

休館日

7,14,21-25,28

2021 / 06

7,14,21-25,28

SUN MON TUE WED THU FRI SAT

江戸の敗者たち

2021年4月15日(木)~5月16日(日) 

現在休館しています

源義経、明智光秀、西郷隆盛…歴史上の敗者たちが大集結

戦いや競争があると、そこに必ず生まれるのが勝者と敗者です。そして日本の歴史上の人物はもちろん、小説や歌舞伎などの物語の中で、私たちの心を惹きつけて深い印象を残すのは、勝者よりむしろ敗者なのではないでしょうか。近年では歴史を敗者の立場から見直すことで、新たな視点を見出そうとする動きも盛んになっています。
そして江戸の人々にとっても、源義経や明智光秀のように戦いに負け、落ちぶれていく者たちのはかなさや悲哀を描いた歌舞伎や小説は、深い共感を呼んだようです。江戸時代に親しまれ、浮世絵に描かれたさまざまな敗者たちに焦点を当てる展覧会です。

二代歌川国綱(二代国輝)「天目山勝頼討死ノ図」

日本人の心を惹きつける「敗者」たち

「判官贔屓(ほうがんびいき)」ということばがあります。源平合戦で平氏に連戦連勝を重ねながら兄頼朝にうとまれ、攻め滅ぼされた源義経が判官の職にあったことから、こうした悲劇的な最期をとげた人物へ同情し、肩を持つ感情のことを言います。
日本人は昔から、戦いに負け、滅びゆく者たちに感情移入しながら、歴史や物語を語ってきました。平家一門や義経をはじめ、楠木正成、明智光秀、西郷隆盛など、そうした例は枚挙にいとまがありません。そして義経の例をみれば明らかなように、勝者と敗者は常に紙一重の存在とも言えるでしょう。浮世絵に描かれたさまざまな人物たちを見ながら、勝つこととは、負けることとは何なのか、思いをめぐらせてみてはいかがでしょうか。

歌川芳虎/重清/岐山「書画五拾三駅 伊勢 石薬師 逆桜」

月岡芳年「魁題百撰相 島左近友之」

歌川広重「忠臣蔵 夜討」

対決!1対1の勝負のゆくえは?

人は時に、自らの力や正義を証明するため、1対1で対決して白黒をはっきりつけようとします。歴史や小説、歌舞伎などの中でも、こうした勝負や競争が物語の山場となることが少なくありません。弁慶と牛若丸の決闘、曽我五郎と朝比奈の力比べなど、浮世絵に描かれた対決の名場面を紹介します。

月岡芳年「義経記五條橋之図」
大森善清「よろひ桜 ろ 五良時宗 朝比奈」

歌舞伎の悪役~「負け」が宿命づけられた人たち

主人公が強大な敵を倒す勧善懲悪の物語は、現代でも根強い人気を誇ります。江戸時代の歌舞伎や小説では、勧善懲悪の物語は最もポピュラーな筋立ての一つであり、圧倒的な力を持つ悪役が登場し、最後は滅びる筋に観客は喝采を送ったのです。悪役は、いわば負けることが宿命づけられた存在とも言えるでしょう。

歌川豊国「菅原伝授手習鑑 車引」 

力士と遊女が飲み比べ? ユーモアあふれる対決も

生死をかけた、真剣な勝負だけでなく、浮世絵にはユーモアあふれる勝負事も描かれています。当時人気の力士と遊女が飲み競べする作品や、役者の人気争いの様子を、ユーモアたっぷりに描いた作品など、ちょっと変わった対決も紹介。

勝川春好 「江戸三幅対」

見どころの作品

悲劇のヒーロー、明智光秀

歌川豊宣「新撰太閤記 此人にして此病あり」

日本の歴史上でも、謀反を起こした悪人として、あるいは三日天下のあとに没落する敗者としてのイメージが強い人物である明智光秀。前作の大河ドラマでは、明智光秀が年々暴走していく織田信長を憂えてやむを得なく謀反を起こすという、悲劇のヒーローとしての新しい光秀像が話題となりました。
しかし意外にも、悲劇のヒーローとしての光秀のイメージは、今にはじまったものではありません。江戸時代の人々にとって光秀は、主殺しの悪人としての側面がある一方、『絵本太閤記』などの小説や歌舞伎では、非情な主君に厭われて侮辱を受け、恨みをつのらせる弱者としてのイメージもあわせ持っているのです。図は『絵本太閤記』で、信長による恵林寺の焼き討ちを諌めた光秀が、鉄扇で打たれる有名な場面。同書には光秀だけでなく、今ではあまり名前が知られていない光秀配下の武将についてもさまざまなエピソードが収められており、当時の光秀の人気の一端をうかがうことができるでしょう。

オンライン展覧会のご案内

太田記念美術館では、noteを利用したオンライン展覧会を実施しています。
気軽に美術館にお越しいただくには難しい状況の中、どうしても行けないという方にもご自宅で展覧会をお楽しみいただけるよう、展示中の作品をインターネット上に公開しました。展示作品を全点掲載していますので、展覧会図録としてもご活用いただけます。
詳しくは以下のリンクをご覧ください。


入館料
一般800円
大高生600円
中学生以下無料

*中学生以上の学生は学生証をご提示下さい。
団体(10名以上)は1名さまあたり100円引き。(一括にてお支払い願います。事前のお申し込みにご協力ください。)新型コロナウイルス感染症の感染予防と拡大防止のため、当面の間は10名以上の団体でのご来館はご遠慮ください。
*障害者手帳提示でご本人とお付き添い1名さま100円引き。
*その他各種割引についてはお問い合わせください。
*料金は消費税込み。

開館日カレンダー

休館日

2021 04

休館日

1-14, 19,25-30

2021 / 04

1-14, 19,25-30

SUN MON TUE WED THU FRI SAT
2021 05

休館日

1-13,17-20,24,31

2021 / 05

1-13,17-20,24,31

SUN MON TUE WED THU FRI SAT