みどころ

I 盗賊・侠客・浪人・悪僧から悪の妖術使いまで-
  江戸の「悪い人」たち、ふたたび大集合。

石川五右衛門などの大盗賊、雁金五人男などの侠客、斧定九郎などの浪人、悪僧や悪の妖術使いなど、江戸時代にはまっとうな道からはずれたアウトローや悪人たちが人気となり、さまざまな脚色がほどこされて芝居や小説などに登場しました。伝説上・架空の人物から当時の江戸を騒がした実在の大盗賊まで、江戸の「悪い人」たちがふたたび大集合します。

歌川国芳

歌川国芳 「木下曽我恵砂路」(個人蔵、後期)

月岡芳年

月岡芳年 「英名二十八衆句 因果小僧六之助」(前期)

月岡芳年

月岡芳年 「長庵札ノ辻ニテ弟ヲ殺害之図」(前期)

豊原国周

豊原国周 「相馬良門古寺之図」(後期)

II 悪の権力者たち

日本の歴史上で、悪人としての評価を受けた権力者たちは数多くいます。例えば元禄赤穂事件で四十七士に倒された吉良上野介は、『仮名手本忠臣蔵』では高師直の名で登場し、歌舞伎の代表的な悪役として広く知られました。他にも平家の全盛を築いた平清盛など、悪のイメージで捉えられた権力者たちをご紹介します。

葛飾北斎

葛飾北斎「仮名手本忠臣蔵 初段」(前期)

月岡芳年

月岡芳年 「平清盛炎焼病之図」(後期)

III 悪女と女伊達

悪に手を染める人々は男性とは限りません。江戸時代の歌舞伎では女盗賊や、盗みやゆすりを働く年増の女性役である「悪婆」、有名な男伊達(侠客)の設定を女性に置き換えた女伊達などの役柄も人気を呼びました。

月岡芳年

月岡芳年 「新撰東錦絵 鬼神於松四郎三郎を害す図」(後期)

歌川国芳

歌川国芳 「浅茅原一ツ家之図」(前期)

Ⅳ 恋と悪

歌舞伎で好まれたのが、時に現代の昼ドラも顔負けのどろどろとした恋愛模様。例えば怪談物の名作「東海道四谷怪談」では民谷伊右衛門とお岩を中心に、屈折した恋愛感情の中で数々の悪事が行われます。また「清玄桜姫物」の芝居に登場する、死してなお桜姫に執着し続ける破戒僧・清玄は、元祖ストーカーとも言えるでしょう。

歌川国貞

歌川国貞(三代豊国) 「東海道四谷怪談」(後期)

歌川国貞

歌川国貞(三代豊国) 「東都贔屓競 二 清玄 桜姫」(前期)

Ⅵ 善と悪のはざま

一口に「善」と「悪」と言っても、その境界は実に曖昧です。芝居では「伊勢音頭恋寝刃」の福岡貢のように、善人がひどい侮辱を受け、とうとう我慢できずに多くの人を殺傷する筋があり、また「義経千本桜」のいがみの権太のように、小悪党が最後に善行をして死んでいくという物語もあります。善と悪を行き来する筋立ては非常に魅力的であり、当時の人たちの心を掴んだのでしょう。

月岡芳年

月岡芳年 「英名二十八衆句 福岡貢」(後期)

月岡芳年

月岡芳年 「英名二十八衆句 古手屋八郎兵衛」(前期)