江戸の凸凹 ―高低差を歩く

2019年6月1日(土)~6月26日(水)
 
6月3、10、17、24日は休館します。

はじめに

昨今、高低差や坂道、スリバチ地形など、ちょっとユニークな視点での街歩きがテレビや書籍で取り上げられ、静かな人気となっています。東京は西側に武蔵野台地が、東側に低地が広がり、神田川、目黒川などの川や、大昔の河川の跡に沿っていくつもの谷が広がる地形が特徴であり、高低差を感じながら歩くと楽しい都市といえるでしょう。
江戸時代に描かれた浮世絵の風景画を眺めてみると、広重をはじめとする浮世絵師たちも、しばしば地形の高低差を意識した構図で、江戸の町を描いています。江戸と現在の東京を比べた時、町並みは大きく異なりますが、高低差や坂道などの地形の特徴は当時からほぼ変わらずに残っています。
本展は、愛宕山や駿河台などの山や台地、神田川など河川の周囲に広がる谷、築地や深川などの水辺に広がる低地、江戸見坂や九段坂などの坂といった、浮世絵に描かれた江戸の凸凹-地形の高低差に焦点を当てる展覧会です。現代の地形とのつながりも感じながら、江戸の町を散歩する気分で浮世絵を楽しんでみてはいかがでしょうか。

昇亭北寿「東都芝愛宕山 遠望品川海」

歌川広重「東都名所 御殿山花見品川全図」

江戸の凸 ―山や台地からの眺め

江戸の町を描いた浮世絵の風景画では、山や台地など、高所からの眺めがしばしば絵の題材となっています。愛宕山の愛宕神社、湯島天神のように、小高い山の上や、台地の端の眺めの良い場所には神社仏閣も多く、それらは名所として親しまれました。ここでは他に、人工の山である富士塚や、五百羅漢寺の三匝堂など、人の手によって作られた眺めの良い名所も合わせて紹介いたします。

歌川広重「名所江戸百景 水道橋 駿河台」

歌川広重「名所江戸百景 目黒新富士」

江戸の凹 -谷や低地を歩く

江戸の町の東側は、江戸湾や隅田川などに面して海抜の低い地域が広がり、西側の台地との際や、河川の周囲には谷状の地形が多く見られます。また江戸時代には海側に向かって埋立てが盛んに行われました。江戸初期に入江が埋め立てられた日比谷をはじめ、築地なども埋め立てによって拡張された海抜の低い地域です。ここでは浮世絵に描かれた谷状の地形や、水辺を中心とする低地の風景を紹介いたします。

歌川広重「東都名所 王子瀧の川」

歌川広重「江戸百景餘興 銕炮洲築地門跡」

江戸の坂 -凸と凹を結ぶ

地形に高低差があれば、その間を結ぶために必ず存在するのが坂です。東京の街歩きを好む人々の間でも、坂は人気のある地形のひとつと言えるでしょう。浮世絵にも、市中の有名な坂が題材となって描かれています。江戸時代の坂は、現在まで地形はもちろんのこと、名前もそのまま残っている場所が多いので、浮世絵に描かれた坂を楽しんでから、現在の様子を訪ねてみるのも楽しいかもしれません。

歌川広重「東都名所坂つくしの内 伊皿子潮見坂之図」

歌川広景「江戸名所道外尽 廿八 妻恋こみ坂の景」

空から江戸の凸凹を見る -俯瞰図

浮世絵師たちは、しばしば想像力を駆使して、空高くから地上を眺める視点で江戸の町を描きました。そこには、江戸に広がる高低差に富んだ地形が描かれています。ここでは俯瞰図と呼ばれる手法で描かれた浮世絵を通して、江戸の町の地形を眺めてみましょう。

北尾政美「江戸名所の絵」

見どころの作品

歌川広重「名所江戸百景 昌平橋聖堂神田川」

写真サンプル

写真サンプル

現在の昌平橋

昌平橋からの視点で、正面に神田川の流れと、右手に湯島聖堂を描きます。左手には大きな切り立った崖が見えています。都心でも屈指の高低差に富んだ地形として知られる、御茶ノ水付近は、実は江戸時代の大土木工事で作り出された人工の渓谷です。
この辺りはもともと神田山と呼ばれる台地で、仙台藩が開削をして神田川を通す大工事を幕府から命ぜられ、万治4年(1661)、伊達綱村の時代に完成しました。伊達政宗もこの工事に関わっていたと言われています。図や写真の地形からは、江戸時代の土木技術の高さがうかがわれるとともに、仙台藩の人々の途方もない苦労をも想像させます。広重の描いた本図は、このダイナミックな地形の高低差をよく表現した一図といえるでしょう。

イベント
学芸員によるスライドトーク

展覧会の見どころを担当学芸員が解説します。

日時
  • 2019年6月5日(水)14:00
  • 2019年6月9日(日)11:00 ※開始時間にご注意ください。
  • 2019年6月14日(金)14:00  (各回約40分)
会場 太田記念美術館 視聴覚室(B1)
参加方法 申込不要 参加無料(要入場券)
トークイベント
演題 浮世絵で歩く江戸と東京の凸凹
日時 2019年6月2日(日) 14:00~15:30
出演者 皆川典久(東京スリバチ学会会長) 渡邉晃(太田記念美術館学芸員)
会場 太田記念美術館 視聴覚室(B1)
定員 80名
参加方法 当日11時より、B1視聴覚室前にて整理券を配布します。(お1人さま1枚。当日入館券またはパスポート会員証をご提示ください) 
参加無料(要入場券)
入館料
一般 700円
大高生 500円
中学生以下 無料
開館日カレンダー

休館日

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