広重 名所江戸百景
後期 5月1日(火)~27日(日)
魅せます! 広重の名品たち
―没後160年記念―
2018年は風景画の巨匠、歌川広重(1797~1858)の没後160年にあたります。これを記念し、太田記念美術館では4~5月に「歌川広重 名所江戸百景」展、9~10月に「没後160年記念 歌川広重」展を開催いたします。実は、太田記念美術館が所蔵する浮世絵のうち最も作品数の多い絵師が広重で、その数およそ2600点。今年はコレクションを中心に選りすぐりの広重作品をご紹介し、その魅力を余すところなくお伝えします。
広重晩年の名作
第1弾となる本展では、「浅草金龍山」や「亀戸梅屋舗」、「大はしあたけの夕立」など誰もが一度は目にしたことのある名品を含む「名所江戸百景」をご紹介いたします。本シリーズは、広重が亡くなるまでの3年を費やし制作した晩年の代表作。また目録と、弟子による作品を含めた120図からなる大作ですが、前期後期に分けて全点を展観いたします。なお太田記念美術館本は保存状態が良好で、摺りも広重の意図が反映された早い段階のものと考えられています。優品を通して、広重が晩年にたどり着いた境地をご堪能ください。
麗しき江戸の記憶
桜散る隅田川に藤咲く亀戸天神、月下の猿若町に雪の浅草寺。今からおよそ160年前、広重は円熟した筆づかいで、江戸の町をみずみずしく描写しました。しかし広重が没し、「名所江戸百景」の刊行がひと段落してからわずか10年後、日本は元号を明治へと変えます。「名所江戸百景」は明治時代以降、すさまじいスピードで様変わりする直前の江戸の姿を切り取っているのです。今と変わらぬ風景、失われた名所。これらを描き出した「名所江戸百景」は、幕末の江戸の空気を今に伝えるタイムカプセルとも言えるでしょう。
奇抜な構図
縦長の画面に風景を描く手法は、実は広重が晩年近くになって好んだものです。この形式をいかし、「名所江戸百景」では手前にモチーフを大きく描く、極端な遠近法を用いたユニークな作品が数多くあります。大胆な構図は、時に江戸の町に入り込んでしまったような臨場感も生み出し、「名所江戸百景」が他にはない魅力を持つ風景画となる要素となっています。60歳を過ぎてなお新たな構図にチャレンジする、広重の旺盛な制作意欲にも驚かされます。
冴えわたる超絶技巧
浮世絵版画にはさまざまな彫りや摺りの技法がありますが、「名所江戸百景」は手間のかかる難しい技が惜しげもなく用いられています。例えば、細く鋭い線で表現された雨を版木に彫り出す技術、また空や水面を表現する際に駆使される「ぼかし」や、絵具を使わず強く摺ることで凹凸を出す「空摺(からずり)」といった摺りの技術など。広重の絵を支える彫師、摺師たちの超絶技巧も見どころです。
見どころの作品 ゴッホも愛した広重
梅の木を画面からはみ出すほど大きく描く奇抜な構図と、鮮やかな色彩が印象的な「亀戸梅屋舗」。橋の上で突然の夕立に見舞われ、人々が慌てて駆け抜けようとする一瞬の情景を切り取った「大はしあたけの夕立」。いずれも「名所江戸百景」でも人気の高い名品です。
近年、ポスト印象派の画家フィンセント・ファン・ゴッホが浮世絵から影響を受けていたことが改めて注目されていますが、なかでもこの2作品は油彩による模写が残されており、大きな関心を寄せていたことが知られます。広重の確かな画力に支えられた大胆な構図や色づかいは、西洋の画家にとってもインパクトのあるものだったのでしょう。洋の東西を問わず人々を魅了するこれらの作品は、浮世絵だけでなく日本美術を代表する逸品とも言えます。
イベント
学芸員によるスライドトーク
展覧会の見どころを担当学芸員が解説します。
日程 | 2018年4月6日(金)、11日(水)、17日(火)、5月2日(水)、11日(金)、17日(木) |
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時間 | 14:00~(40分程度) |
場所 | 太田記念美術館 視聴覚室(B1) |
参加方法 | 申込不要 参加無料(要入場券) |
若手研究者講演会
日程 |
2018年4月21日(土)「浮世絵グローバリゼーション ――江戸の浮世絵と、大正・昭和の西洋人新版画作家たち」永谷侑子氏(慶應義塾大学大学院) |
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時間 | 14:00~15:30 |
場所 | 太田記念美術館 視聴覚室(B1) |
参加方法 | 申込不要 参加無料(要入場券) |
入館料
一般 | 700円 |
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大高生 | 500円 |
中学生以下 | 無料 |