小原古邨

 企画展
2019年2月1日(金)~3月24日(日)
前期 2月1日(金)~24日(日)
後期 3月1日(金)~24日(日)
※前後期で全点展示替え
 
2月4、12、18、25~28、3月4、11、18日は休館します。

 

 

知られざる絵師、小原古邨の全貌に迫る

小原古邨(1877~1945)は、明治末から大正、昭和にかけて活躍した絵師です。可愛らしい鳥や動物、花といった身近な自然を、木版画で表現しました。
本展では、明治末から大正にかけて、松木平吉の元から刊行された古邨落款の木版画や、昭和前半に、渡邊庄三郎の元から刊行された祥邨落款の新版画を展示。さらに、制作工程が分かる、肉筆の下絵や試し摺りも合わせて紹介します。約150点の展示作品(前後期で全て展示替え)を通して、古邨の全貌をお楽しみいただけることでしょう。
なお、茅ヶ崎市美術館で開催中(2018年9月9日~11月4日)の「原安三郎コレクション 小原古邨展 花と鳥のエデン」とは、出品作品が異なる別内容の展覧会です。


「踊る狐」(個人蔵)


「鷹と温め鳥」(個人蔵)


「月に木菟」(個人蔵)


「猿と蜂」(個人蔵)


「月夜の烏」(渡邊木版美術画舗蔵)


「雪中群鷺」(渡邊木版美術画舗蔵)

 

入館料
一般 700円
大高生 500円
中学生以下 無料

※障碍者手帳をご提示いただくと、ご本人様とお付添1名まで、入館料から100円割引いたします。(割引の併用はできません)

※中学生以上の学生は学生証をご提示ください。

開館日カレンダー

休館日

   

花魁ファッション

 企画展
2018年11月2日(金)~12月20日(木)
前期 11月2日(金)~11月25日(日)
後期 11月30日(金)~12月20日(木)
※前後期で全点展示替え
 
11月5、12、19、26~29、12月3、10、17日は休館します。

 

 


歌川豊広「観桜酒宴図」(後期)

遊興の別天地として繁栄した吉原。そのトップに君臨したのが花魁(おいらん)でした。花魁は現代でも繰り返し映画や漫画のヒロインになるなど、その浮世離れした魅力は時代を超えて人々を惹きつけています。

花魁と言えばまず華やかなファッションが思い浮かびますが、江戸時代、花魁となるには美貌だけでなく、教養を備え、芸事にも秀でていることが必須でした。花魁のもとへは、武士や裕福な町人をはじめ当時の著名人も多く通い、彼らを中心として、吉原は文化サロンの様相を呈することもありました。セレブたちとの華麗な交流も注目の的ともなったことでしょう。一方で、彼女たちの置かれた過酷な境遇を理解する江戸の人々は、遊里を「苦界(くがい)」とも呼び、その中で生きる花魁たちを修行する達磨や悟りの境地に近い普賢菩薩に例えることもありました。

本展では花魁のファッショナブルな装いや、日常の生活を捉えた作品をご紹介いたします。江戸文化のなかで独特の存在感を示す花魁。その魅力に、浮世絵を通して触れてみてください。

 

ゴージャスなファッション

美しくあることが何よりも求められた花魁。いくつもの櫛や簪を挿したゴージャスな髪型、季節ごとに変わる贅を尽くした衣装、前結びの帯や三つ歯の下駄など、浮世絵には独特のファッションが描かれています。時代によって流行は変わりますが、遊女の姿は常にその先端であり続けました。一般の女性にとってそのファッションは取り入れ易いものではありませんでしたが、最新のモードに身を包む花魁たちの姿は大いに魅力的だったと言えるでしょう。


鳥高斎栄昌「扇屋見世略 あやこし はしたて はなひと」(前期)


歌川国貞「松葉屋内代々山 かけを にしき」(後期)


歌川国貞「当世美人合 おゐらん」(前期)


溪斎英泉「傾城江戸方格 水道橋 丁子屋内唐歌」(前期)

 

郭(くるわ)でくらす


喜多川歌麿「美人読玉章図」(後期)

食い入るように手紙を読み、かいがいしく客の世話をする。またある時はヤキモチを焼き、朋輩たちとくつろぐ。そんな花魁たちの人間らしい表情も、浮世絵には描き出されています。

客の目に触れない時間も含めて、遊女たちが遊里の中でいかに過ごしたのかをご紹介いたします。


喜多川歌麿「青楼十二時 続 卯ノ刻」(前期)


喜多川歌麿「青楼七小町 大文字屋内多賀袖」(後期)

 

肉筆画の世界


宮川長春「美人立姿図」(前期)

肉筆美人画は、浮世絵において最も早くから手がけられてきた人気のジャンルです。なかでも遊女を描く作品は、ひときわ豪華で丁寧な彩色の作品も多く、時に大名などの貴顕に所有されることもありました。

本展では宮川長春「美人立姿図」や喜多川歌麿「美人読玉章図」、鳥文斎栄之「吉原十二時絵巻」など、太田記念美術館が所蔵する肉筆画の優品を多数展示いたします。版画とは異なる、緻密で、時に洒脱な肉筆美人画の世界をご堪能ください。


鳥文斎栄之「吉原十二時絵巻」(後期)

見どころの作品

歌川豊春「桜下花魁道中図」(前期)

                         

満開の桜の下では、花魁道中が行われています。中央の花魁は、黒地に若松模様の品あるデザインの仕掛(しかけ)を羽織りますが、下に着た赤地に桜花を散らした間着(あいぎ)との対比が大変艶やかです。ところで、彼女を取り巻く女性たちは誰なのでしょうか。

左右の少女は妹分の禿(かむろ)。その後ろ、向かって右は振袖新造(ふりそでしんぞう)と呼ばれる、禿よりは年長の遊女見習いです。左はおそらく引退した遊女が務めた番頭新造(ばんとうしんぞう)。花魁の身の回りの世話をはじめ、客を魅了する手練手管の手ほどきもしました。

禿は花魁とお揃いの、また新造も赤地に若松という花魁と関係するデザインの振袖を着ており、実に華やかです。そもそも数人を引き連れ引手茶屋に客を迎えに行く花魁道中は格の高いごくわずかな遊女にしか許されなかったもの。人気ぶりが絶頂期にある花魁ならではのものと言えるでしょう。

イベント
学芸員によるスライドトーク

展覧会の見どころを担当学芸員が解説します。

日程 2018年11月6日(火)、10日(土)、16日(金)、30日(金)、12月11日(火)
時間 14:00~(40分程度)
場所 太田記念美術館 視聴覚室(B1)
参加方法 申込不要 参加無料(要入場券)
入館料
一般 700円
大高生 500円
中学生以下 無料

※障碍者手帳をご提示いただくと、ご本人様とお付添1名まで、入館料から100円割引いたします。(割引の併用はできません)

※中学生以上の学生は学生証をご提示ください。

開館日カレンダー

休館日

   

没後160年記念 歌川広重

特別展
2018年9月1日(土)~10月28日(日)
前期 9月1日(土)~24日(月祝)
後期 9月29日(土)~10月28日(日)
※前後期で全点展示替え
 
9月3日、10日、18日、25日~28日、10月1日、9日、15日、22日は休館します。
 

 


歌川広重「月に雁」(太田記念美術館蔵)前期

日本各地の風景を叙情豊かに描いた浮世絵師、歌川広重(1797~1858)。「東海道五拾三次之内」や「名所江戸百景」といった代表作は、日本のみならず海外でも広く知られています。今年2018年は、広重が亡くなってから160年にあたる節目の年。太田記念美術館ではそれを記念して、広重の画業の全貌を紹介する展覧会を開催いたします。


歌川広重「東海道五拾三次之内 庄野 白雨」(太田記念美術館蔵)後期

9月6日は広重の命日。今年は没後160年。

広重が亡くなったのは安政5年(1858)9月6日。墓所である東岳寺(東京都足立区)では毎年法要も営まれています。その命日に重なるよう、没後160年記念展を開催いたします。太田記念美術館のコレクションの中でも、最も点数が多いのが広重の作品。その中から、代表作である「東海道五拾三次之内」や「名所江戸百景」を含め、選りすぐりの広重の名作をご紹介します。太田記念美術館では13年ぶりに開催される大回顧展となります。


歌川広重「東海道五拾三次之内 蒲原 夜之雪」(太田記念美術館蔵)前期


歌川広重「木曽海道六拾九次之内 三拾貳 洗馬」(太田記念美術館蔵)後期

名品から珍品まで、広重の全貌に迫る。


歌川広重「雪月花の内 月の夕部」(太田記念美術館蔵)前期

広重の代表作と言えばもちろん風景画ですが、広重は美人画や花鳥画、戯画など、さまざまなジャンルの浮世絵を描いています。普段は紹介されることの少ないこれらのジャンルの作品も含め、200点以上展示します(前後期で全点展示替え)。もしかしたら、広重のイメージが変わるかも知れません。


歌川広重「鯛 鯉 鰹」(太田記念美術館蔵)後期


歌川広重「東都名所 高輪之明月」(太田記念美術館蔵)前期

歌川広重「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」(太田記念美術館蔵)前期

歌川広重「冨士三十六景 駿河薩タ之海上」(太田記念美術館蔵)後期

ハロウィンの元祖?

10月と言えば、ここ数年人気の高まっているハロウィン。広重の作品の中に、ハロウィンの仮装パーティーの元祖では?と思うような人が描かれています。大勢の人たちでにぎわう中、タコの着ぐるみを着ている謎の男性。実はこの作品、二十六夜待ちという江戸時代の行事を描いたものです。二十六夜待ちとは、旧暦7月26日の夜、月の出を拝もうという行事のこと。芝高輪の海岸付近では、茶屋や船の上で宴会を開きながら、月の出を待つ人で溢れていました。
タコの着ぐるみを着ている男性は、俄(にわか)という、素人たちが即興で踊りや芝居をするグループの一人なのです。俄では仮装をすることが多く、タコの男性の隣には漁師に扮した男性がいます。もちろんハロウィンと直接のつながりはありませんが、江戸時代の人々も仮装を楽しんでいた様子がうかがえます。
ちなみにこの作品、寿司屋、天ぷら屋、蕎麦屋など、庶民たちに親しまれた屋台の様子が描かれているのも特徴です。江戸のグルメ文化を知る上でも面白い作品と言えるでしょう。


歌川広重「東都名所 高輪廿六夜待遊興之図」(太田記念美術館蔵)後期

 

この秋、日本各地で、広重没後160年展が開催

歌川広重の名前を冠した美術館が日本各地に4つもあるのはご存知でしょうか? しかも、山形県、栃木県、静岡県、岐阜県と全国に広がっています。この秋、日本各地の広重美術館が連携し、広重の没後160年を記念した展覧会を開催します。全国に広がる広重人気を体感してください。

山形県天童市鎌田本町1-2-1
広重が描く日本の風景
2018年8月31日(金)~10月29日(月)
栃木県那須郡那珂川町馬頭116-9
大広重展-肉筆浮世絵と錦絵の世界-
2018年7月14日(土)~9月24日(月)
静岡県静岡市清水区清水区由比297-1
めいしょ広重
2018年8月14日(火)~11月25日(日)
岐阜県恵那市大井町176-1

木曽海道六拾九次之内 2018年8月30日(木)~9月30日(日)

原安三郎コレクション公開 北斎と広重展 2018年10月4日(木)~12月2日(日)

*本展会期中、当館ご入場時に上記の4館いずれかの広重展チケット半券のご提示で、入館料を100円割引いたします。また、当館のチケット半券を他の施設へお持ちいただくと、入館料が割引になります。1枚につき1名、割引の併用はできません。詳しくはこちら

 

 

見どころの作品 ―美しき広重ブルー―

歌川広重「東海道五拾三次之内 沼津 黄昏図」(太田記念美術館蔵)前期

                         

有名な保永堂版東海道五十三次の中で、唯一、月景色をテーマにした作品です。
日が沈み、すっかり薄暗くなった時刻。満月の月明かりに照らされながら、3人の旅人たちが静かに歩を進めています。先を歩くのは二人連れの比丘尼、後ろで巨大な天狗の面を背負っているのは金比羅参りの男性でしょう。奥に見える橋を渡れば、沼津宿に入ります。
夜空と川には、海外から輸入されたベロ藍という絵具が用いられ、「広重ブルー」と称された美しい青の世界を演出しています。心穏やかに満月を眺める、秋の季節には最適の名品でしょう。

入館料
一般 1000円
大高生 700円
中学生以下 無料

※会期中2回目以降ご鑑賞の方は半券のご提示にて200円割引。

※広重美術館、那珂川町馬頭広重美術館、静岡市東海道広重美術館、中山道広重美術館のいずれかの広重展チケット半券のご提示にて100円割引。

※障碍者手帳をご提示いただくと、ご本人様とお付添1名まで、100円割引。

※団体(10名様以上)は1名あたり100円割引。事前にお申込みをお願いいたします。

※割引の併用はできません。

※中学生以上の学生は学生証をご提示ください。

 

開館日カレンダー

休館日

   

江戸の悪 PARTⅡ

特別展
2018年6月2日(土)~7月29日(日)
前期 6月2日(土)~27日(水)
後期 6月30日(土)~7月29日(日)
※前後期で全点展示替え
 
6月4、11、18、25、28、29、7月2、9、17、23日は休館します。
 

展覧会公式サイト

 

 


名所江戸百景 隅田川水神の森真崎(前期展示)


人はなぜ、悪に、惹かれるのか


人は何故「悪」に惹きつけられるのでしょうか。ドラマや映画、小説などで、悪役は時に主人公を凌ぐほどの魅力をはなつことが少なくありません。そして江戸を生きた人々も、すでにこの「悪」の持つ底知れぬ魅力に気づいていたようです。例えば世間を騒がせた大盗賊が市中引き回しになると、その姿を一目見ようと街道は群衆で埋め尽くされたと言います。また元禄赤穂事件などの大事件はすぐに芝居にも移され、吉良上野介は稀代の悪人としてのイメージを定着させていきます。幕末には、盗賊が登場する「白浪物」の芝居が流行し、盗賊や小悪党が人気を呼びました。当時の人たちは現実、虚構を問わず、「悪」の持つ魅力に好奇心を抱き、時に酔いしれたのです。
さまざまな悪人たちのイメージを、描かれた浮世絵から探る本展覧会は、2015年に開催して好評を博した同名の展覧会のパワーアップ版。鼠小僧次郎吉などの盗賊、幡随院長兵衛などの侠客、悪の権力者、悪女、悪の妖術使いなど、実在した悪人から物語に登場する架空の人物まで-江戸の「悪い人」たちが、人数も倍増して、ふたたび大集合いたします。

I 盗賊・侠客・浪人から悪の権力者・悪女・悪の妖術使いまで― 江戸の「悪い人」たち、ふたたび大集合。

石川五右衛門などの大盗賊、雁金五人男などの侠客、斧定九郎などの浪人、悪の権力者、悪女、悪の妖術使いなど、江戸時代にはまっとうな道からはずれたアウトローや悪人たちが人気となり、さまざまな脚色がほどこされて芝居や小説などに登場しました。伝説上・架空の人物から当時の江戸を騒がした実在の大盗賊まで、江戸の「悪い人」たちがふたたび大集合します。


月岡芳年「東錦浮世稿談 神田伯勇 幡随院長兵衛」個人蔵(後期)


歌川国芳「木下曽我恵砂路」個人蔵(後期)


月岡芳年「英名二十八衆句 因果小僧六之助」(前期)


月岡芳年「長庵札ノ辻ニテ弟ヲ殺害之図」(前期)


葛飾北斎「仮名手本忠臣蔵 初段」(前期)


月岡芳年「新撰東錦絵 鬼神於松四郎三郎を害す図」(後期)


豊原国周「相馬良門古寺之図」(後期)

Ⅱ 恋と悪

歌舞伎で好まれたのが、時に現代の昼ドラも顔負けのどろどろとした恋愛模様。例えば怪談物の名作「東海道四谷怪談」では民谷伊右衛門とお岩を中心に、屈折した恋愛感情の中で数々の悪事が行われます。また「清玄桜姫物」の芝居に登場する、死してなお桜姫に執着し続ける破戒僧・清玄は、元祖ストーカーとも言えるでしょう。


歌川国貞(三代豊国)「東海道四谷怪談」(後期)


歌川国貞(三代豊国)「東都贔屓競 二 清玄 桜姫」(前期)

Ⅲ 善と悪のはざま

一口に「善」と「悪」と言っても、その境界は実に曖昧です。芝居では佐野次郎左衛門のように善人がひどい侮辱を受け、とうとう我慢できずに多くの人を殺傷する筋があり、また「義経千本桜」のいがみの権太のように、小悪党が最後に善行をして死んでいくという物語もあります。善と悪を行き来する筋立ては非常に魅力的であり、当時の人たちの心を掴んだのでしょう。


落合芳幾「英名二十八衆句 佐野治郎左エ門」(前期)


月岡芳年「英名二十八衆句 福岡貢」(後期)

入館料
一般 1000円
大高生 700円
中学生以下 無料

※会期中2回目以降ご鑑賞の方は半券のご提示にて200円割引(他の割引との併用不可)

◆多分野連携展示【悪】相互割引
入場券ご購入時に以下のいずれかをご提示いただくと、100円割引にてご入場いただけます。
・ヴァニラ画廊「HN【悪・魔的】コレクション~evil devil~」展パンフレットに付属のクーポン
・東洋文庫ミュージアム「悪人か、ヒーローか Villain or Hero」展入場料のレシート
(1枚につき1名様、1回限り有効、割引の併用はできません)

広重 名所江戸百景

企画展
2018年4月1日(日)~5月27日(日)
前期 4月1日(日)~26日(木)
後期 5月1日(火)~27日(日)
※前後期で全点展示替え
 
4月2、9、16、23、27~30、5月7、14、21日は休館します。
 

 

 

 


名所江戸百景 隅田川水神の森真崎(前期展示)

魅せます! 広重の名品たち 

―没後160年記念―


2018年は風景画の巨匠、歌川広重(1797~1858)の没後160年にあたります。これを記念し、太田記念美術館では4~5月に「歌川広重 名所江戸百景」展、9~10月に「没後160年記念 歌川広重」展を開催いたします。実は、太田記念美術館が所蔵する浮世絵のうち最も作品数の多い絵師が広重で、その数およそ2600点。今年はコレクションを中心に選りすぐりの広重作品をご紹介し、その魅力を余すところなくお伝えします。

広重晩年の名作


名所江戸百景 浅草金龍山(後期展示)

第1弾となる本展では、「浅草金龍山」や「亀戸梅屋舗」、「大はしあたけの夕立」など誰もが一度は目にしたことのある名品を含む「名所江戸百景」をご紹介いたします。本シリーズは、広重が亡くなるまでの3年を費やし制作した晩年の代表作。また目録と、弟子による作品を含めた120図からなる大作ですが、前期後期に分けて全点を展観いたします。なお太田記念美術館本は保存状態が良好で、摺りも広重の意図が反映された早い段階のものと考えられています。優品を通して、広重が晩年にたどり着いた境地をご堪能ください。

麗しき江戸の記憶

桜散る隅田川に藤咲く亀戸天神、月下の猿若町に雪の浅草寺。今からおよそ160年前、広重は円熟した筆づかいで、江戸の町をみずみずしく描写しました。しかし広重が没し、「名所江戸百景」の刊行がひと段落してからわずか10年後、日本は元号を明治へと変えます。「名所江戸百景」は明治時代以降、すさまじいスピードで様変わりする直前の江戸の姿を切り取っているのです。今と変わらぬ風景、失われた名所。これらを描き出した「名所江戸百景」は、幕末の江戸の空気を今に伝えるタイムカプセルとも言えるでしょう。


名所江戸百景 亀戸天神境内(後期展示)


名所江戸百景 猿わか町よるの景(前期展示)


名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣(前期展示)

奇抜な構図

縦長の画面に風景を描く手法は、実は広重が晩年近くになって好んだものです。この形式をいかし、「名所江戸百景」では手前にモチーフを大きく描く、極端な遠近法を用いたユニークな作品が数多くあります。大胆な構図は、時に江戸の町に入り込んでしまったような臨場感も生み出し、「名所江戸百景」が他にはない魅力を持つ風景画となる要素となっています。60歳を過ぎてなお新たな構図にチャレンジする、広重の旺盛な制作意欲にも驚かされます。


名所江戸百景 深川万年橋(後期展示)


名所江戸百景 深川洲崎十万坪(前期展示)

冴えわたる超絶技巧

浮世絵版画にはさまざまな彫りや摺りの技法がありますが、「名所江戸百景」は手間のかかる難しい技が惜しげもなく用いられています。例えば、細く鋭い線で表現された雨を版木に彫り出す技術、また空や水面を表現する際に駆使される「ぼかし」や、絵具を使わず強く摺ることで凹凸を出す「空摺(からずり)」といった摺りの技術など。広重の絵を支える彫師、摺師たちの超絶技巧も見どころです。

 

見どころの作品 ゴッホも愛した広重


名所江戸百景 亀戸梅屋舗(前期展示)


名所江戸百景 大はしあたけの夕立(後期展示)

梅の木を画面からはみ出すほど大きく描く奇抜な構図と、鮮やかな色彩が印象的な「亀戸梅屋舗」。橋の上で突然の夕立に見舞われ、人々が慌てて駆け抜けようとする一瞬の情景を切り取った「大はしあたけの夕立」。いずれも「名所江戸百景」でも人気の高い名品です。
近年、ポスト印象派の画家フィンセント・ファン・ゴッホが浮世絵から影響を受けていたことが改めて注目されていますが、なかでもこの2作品は油彩による模写が残されており、大きな関心を寄せていたことが知られます。広重の確かな画力に支えられた大胆な構図や色づかいは、西洋の画家にとってもインパクトのあるものだったのでしょう。洋の東西を問わず人々を魅了するこれらの作品は、浮世絵だけでなく日本美術を代表する逸品とも言えます。

イベント
学芸員によるスライドトーク

展覧会の見どころを担当学芸員が解説します。

日程 2018年4月6日(金)、11日(水)、17日(火)、5月2日(水)、11日(金)、17日(木)
時間 14:00~(40分程度)
場所 太田記念美術館 視聴覚室(B1)
参加方法 申込不要 参加無料(要入場券)
若手研究者講演会
日程

2018年4月21日(土)「浮世絵グローバリゼーション ――江戸の浮世絵と、大正・昭和の西洋人新版画作家たち」永谷侑子氏(慶應義塾大学大学院)

時間 14:00~15:30
場所 太田記念美術館 視聴覚室(B1)
参加方法 申込不要 参加無料(要入場券)
入館料
一般 700円
大高生 500円
中学生以下 無料