浮世絵にみる意匠 -江戸の出版デザイン-

勝川春好「三代目坂田半五郎の景清」
企画展
2011年2月1日(火)~2月20日(日)

2月7・14日は休館となります。

※展覧会の図録は作成いたしません。

はじめに

浮世絵を見て現代の人が感じる魅力のひとつに、その優れたデザイン性があります。大胆な構図、鮮やかな色彩、そして画面にアクセントを添えるコマ絵や装飾…。浮世絵が印象派を中心とした西洋美術に影響を及ぼしたことは広く知られていますが、彼らを魅了した大きな理由のひとつに、そのデザイン性が挙げられることは疑いの余地がないでしょう。
浮世絵の歴史を眺めてみると、それはまさにデザインの歴史とも言え、様々な構図や、色彩や、装飾的要素が少しずつ工夫され、長い年月をかけて発展したものであることが分かります。現代の商業デザインがそうであるように、浮世絵は商業的な枠組みの中で、版元や購買者のニーズにあわせて作られたものです。浮世絵を売るためには少しでも奇抜で人目を引くものを常に出版し続けなければなりません。そのため、絵師や版元は血のにじむような努力で新しい構図や、色彩や、画面を彩るデザインを日々考え出したのです。そうした過程を経て、幕末には浮世絵デザインの集大成とも言える、複雑なレイアウトや装飾を伴った高度な作品が大量に出版されています。
本展は江戸の人々を楽しませ、現代人をも魅了する浮世絵の高度なデザインが、どのように形作られていったのかを探る展覧会です。江戸の出版人たちの、細やかかつ大胆なデザインへの挑戦をお楽しみください。

浮世絵をレイアウトする ―判型や構図のいろいろ―

サイズの小さな「細判」、より大画面の「大判」、縦に細長い「柱絵判」、ワイドな横画面の「大判三枚続」、時には画面を線で区切って6分割や9分割にするなど、浮世絵ではその長い歴史の中でさまざまな「キャンバス」のサイズが考案され、絵師たちはそのサイズを生かしたレイアウトを考えました。
例えば鳥居清長は縦に極端に長い柱絵判に、すらりとした女性の全身像を描き、勝川春潮は大判三枚続に女性たちの群像を捉え、勝川春好は浮世絵のサイズが細判から大判へと拡大する流れの中で、大判の大画面を活かして役者の顔をクローズアップする「大顔絵」を手がけ、のちの写楽らに影響を与えたのです。
鳥居清長「母の裾をひく子」

縦に細長い「柱絵」
鳥居清長「母の裾をひく子」

勝川春好「三代目坂田半五郎の景清」

極端な顔のクローズアップ「大顔絵」
勝川春好「三代目坂田半五郎の景清」

葛飾北斎 「冨嶽三十六景 東都浅草本願寺」

画面を九分割してたくさんの役者を描く
歌川国政「亥の顔見世」

勝川春潮「真崎稲荷詣」

大判三枚続のワイドな画面に群衆を描く
勝川春潮「真崎稲荷詣」

浮世絵をいろどるさまざまな意匠 ―コマ絵とフレーム―

扇形、円形、州浜形、羽子板、鏡など、浮世絵師たちはさまざまなモチーフを用いて浮世絵を自在にデザインしました。これらのモチーフは人物の周りにほどこされる「画面枠(フレーム)」、現代のコミックに見られるコマそっくりの「コマ絵」などに用いられ、浮世絵に洒落たアクセントをつけているのです。単にデザイン的に美しいだけでなく、コマの中に絵に関係する風景が描かれていたり、謎ときが隠されていたり…。その趣向は、幕末に近づくにつれさらに洗練され、高度になっていきました。浮世絵師や版元の尽きないアイデアは、現代の目から見ても十分に楽しめるものといえるでしょう。 
二代鳥居清信 「新板江戸八景一 観音の晴嵐」

扇形を使ったフレーム
二代鳥居清信 「新板江戸八景一 観音の晴嵐」

歌川国貞「浮世名異女図会 浪花新町 大夫」

扇型の図案をコマ絵に用いる
歌川国貞「浮世名異女図会 浪花新町 大夫」

豊原国周「五代目坂東彦三郎 初代河原崎権十郎 二代目岩井紫若」

三枚続に扇形のフレームを使った大迫力の役者絵
豊原国周「五代目坂東彦三郎 初代河原崎権十郎 二代目岩井紫若」

<見どころの一点>
溪斎英泉 「江戸両国橋ヨリ立川ヲ見ル図」

溪斎英泉 「江戸両国橋ヨリ立川ヲ見ル図」

両国橋を左手に、立川方面を眺めた風景画です。しかし絵を見るより先に、まず目に飛び込んでくるのは黒字に何やらアルファベット風の文字が並んだ画面枠。ほとんどは意味のない文字ですが、画面右上に一部文字が逆さまながら「Holland(オランダ)」と読める部分、数カ所にオランダ東インド会社の略称「VOC」をデザイン化したマークが見られます。面白いのが画面中央下に見える「板元」の文字と、その間にあるマーク。実はこのマークは江崎屋辰蔵の版元印で、周囲の欧風の文字にうまく溶けこませているのです。まるで西洋の額縁のようなデザインが効果的な一枚です。

入館料
一般700円
大高生500円
中学生以下無料
開館日カレンダー
カレンダー

『笑う浮世絵 -戯画と国芳一門』

歌川国芳「両面相」(個人蔵)後期展示
特別展
2013年10月1日(火)~11月26日(火)
前期:2013年10月1日(火)~10月27日(日)
後期:2013年11月1日(金)~11月26日(火)
※前後期で展示替え

10月7・15・21・28~31日/11月5・11・18・25日は休館となります。

マンガのルーツ?いま見ても斬新な国芳一門による「江戸の笑い」

江戸の人々はお笑いが大好き。歌舞伎はもとより、落語などの演芸、文学などさまざまな分野で、粋で洒脱な笑いが発達しました。浮世絵の分野でも、特に江戸後期には、歌川国芳を中心に溢れ出るアイデアと高度なユーモアに満ちた魅力的な作品が描かれています。猫やほおずきが擬人化されて人間のように生き生きと動き回ったり、人間の欲望をユーモラスに風刺したり。また画面の絵をヒントに隠された意味を紐解く「判じ絵」など、斬新な発想には思わずにやりとしてしまいます。機知に富んだ知的な笑いもあれば、時には苦笑を誘うような「脱力系」の笑いもある、多種多様な「江戸の笑い」。江戸時代に花開いた豊かな笑いの文化は、マンガやお笑い番組など、現代の日本人にとっての「笑い」の源流とも言えるでしょう。本展では、奥深い江戸の笑いの世界を、浮世絵を通してご紹介いたします。ぜひ肩の力を抜いて、お楽しみください。

笑い1「なんでも擬人化!」

国芳を中心とした浮世絵師たちは、猫、狸、鳥、亀あるいは玩具など、あらゆるものを生き生きと「擬人化」した作品を描きました。ディズニー映画も顔負けの、斬新な表現をお楽しみください。
歌川貞秀「蛸踊り」(太田記念美術館所蔵)前期展示

 歌川貞秀「蛸踊り」(太田記念美術館所蔵)前期展示

歌川国芳「道外 とうもろこし 石橋の所作事」(個人蔵)後期展示

歌川国芳「道外 とうもろこし 石橋の所作事」(個人蔵)後期展示

「道外 とうもろこし 石橋の所作事」の解説
歌川芳員「東海道五十三次内 吉原 かんばらへ二リ廿五丁」(個人蔵)前期展示

富士山をバックに街道沿いで立ち話をしているのは、蛇と蛙?
歌川芳員「東海道五十三次内 吉原 かんばらへ二リ廿五丁」(個人蔵)前期展示

歌川国芳「ほうづきつくし 五條のはし」(個人蔵)後期展示

歌川国芳「ほうづきつくし 五條のはし」(個人蔵)後期展示

「ほうづきつくし 五條のはし」の解説

笑い2「形・組み合わせの妙」

たくさんの人が集まって大きな人を形作る、障子に映るシルエットで遊ぶなど、ものの「形」をキーワードに、縦横無尽の発想力で描かれた作品を紹介します。
歌川国芳「人かたまつて人になる」(個人蔵)前期展示

歌川国芳「人かたまつて人になる」(個人蔵)前期展示

歌川国芳「両面相」(個人蔵)後期展示

歌川国芳「両面相」(個人蔵)後期展示

歌川広重「即興かけほしづくし ふじの山/即興図両づくし らんかんぎぼし」(個人蔵)前期展示

複雑なポーズをとる人物。障子越しにみると…。
歌川広重「即興かけほしづくし ふじの山/即興図両づくし らんかんぎぼし」(個人蔵)前期展示

歌川豊国「猫の介科」(個人蔵)後期展示

歌川豊国「猫の介科」(個人蔵)後期展示

「猫の介科」の解説

笑い3「ユーモラスな人々」

浮世絵師たちは江戸時代の人々をしばしば皮肉に満ちた視点で面白おかしく描いています。時に社会諷刺も込められた、ユーモラスな人間像を描いた作品を紹介します。
歌川国芳「妙名異相胸中五十三面(日本橋から戸塚)」(個人蔵)前期展示

歌川国芳「妙名異相胸中五十三面(日本橋から戸塚)」(個人蔵)前期展示

歌川国芳「荷宝蔵壁のむだ書 (黄腰壁)」(個人蔵) 後期展示

当時の歌舞伎役者たちを壁の落書き風に描いています。真ん中には、ユーモラスな猫が。
歌川国芳「荷宝蔵壁のむだ書 (黄腰壁)」(個人蔵) 後期展示

「妙名異相胸中五十三面(日本橋から戸塚)」の解説

笑い4「文字と言葉の戯れ」

絵の中に文字が隠されていたり、描かれた絵をヒントに隠された言葉を探したり…。文字と言葉によるさまざまな遊びが込められた作品を紹介します。
三代歌川豊国「七福神寿柱建之図」(個人蔵)前期展示七福神が文字の切れ端を運んで「寿」という字を組み立てるという、なんとも縁起の良い作品。

三代歌川豊国「七福神寿柱建之図」(個人蔵)前期展示七福神が文字の切れ端を運んで「寿」という字を組み立てるという、なんとも縁起の良い作品。

「七福神寿柱建之図」の解説

笑い5「浮世絵で遊ぶ」

江戸時代に流行した「拳遊び」のルールを面白おかしく描いた作品や、変装グッズの元祖とも言える「目鬘(めかつら)」など、遊んで楽しめる「参加型」の浮世絵を紹介します。
無款「風流 百目玉」(個人蔵)後期展示「目鬘(めかつら)」「百眼(ひゃくまなこ)」などという、目だけを描いた簡単な仮面。厚紙を貼って切り取って使います。

「目鬘(めかつら)」「百眼(ひゃくまなこ)」などという、目だけを描いた簡単な仮面。厚紙を貼って切り取って使います。
無款「風流 百目玉」(個人蔵)後期展示

「七福神寿柱建之図」の解説
歌川芳員「東海道五十三次内大磯をだハらへ四り」(太田記念美術館蔵)後期展示

歌川芳員「東海道五十三次内 大磯をだハらへ四り」(太田記念美術館蔵)後期展示

もちろん出ます、国芳の猫!

国芳の戯画と言えば、猫。本展にもさまざまな猫が登場します。擬人化、文字化、合体巨大化。国芳と一門の弟子たちがユーモラスに描いた猫たちの中から、お気に入りの一匹を見つけてください。
歌川国芳「流行猫の曲鞠」(個人蔵)前期展示

歌川国芳「流行猫の曲鞠」(個人蔵)前期展示

歌川国芳「猫の当字 かつを」(個人蔵)前期展示

歌川国芳「猫の当字 かつを」(個人蔵)前期展示

歌川国芳「其まゝ地口猫飼好五十三疋」三枚続きのうち左図(個人蔵)後期展示

歌川国芳「其まゝ地口猫飼好五十三疋」三枚続きのうち左図(個人蔵)後期展示

歌川芳藤「小猫をあつめ大猫とする」(個人蔵)前期展示

歌川芳藤「小猫をあつめ大猫とする」(個人蔵)前期展示

入館料

リピーター割引あり(会期中2回目以降ご鑑賞の方は半券のご提示にて100円割引)

一般1000円
大高生700円
中学生以下無料
開館日カレンダー
カレンダー

『幕末の見立絵 -三代豊国・広重・国芳』

企画展
2013年11月30日(土)~12月20日(金)

12月2・9・16日は休館となります。

※本展覧会の図録は作成いたしません。

謎解きで楽しむ浮世絵

浮世絵によく見られる「美人画」や、「役者絵」、そして「風景画」。何気なく目にしているこれらのモチーフにも、実はちょっとした「謎掛け」が仕掛けられ、背後に別の意味や関係性が隠されていることが少なくありません。江戸の浮世絵師や版元たちが絵に込めたこれらの「謎掛け」は、和歌や俳諧などの文学、日本の歴史、歌舞伎、地方の地理や風俗などを踏まえたもので、幅広い教養があって初めて、作品の本当の意味を知ることができるのです。中でも三代歌川豊国や歌川国芳、歌川広重らによって幕末に多く描かれ、大流行したのが「見立絵」と呼ばれる手法。見立絵とは、連想ゲームのように、画中の題材から別のイメージを連想して楽しむ、知的な趣向の絵のことを言います。見立絵に隠された意味や関係性を読み解くことによって、私たちは江戸の人たちが楽しんだ、豊かな教養を垣間見ることができるのです。見立絵を通じて、「一歩深い」浮世絵の見方を学んでみませんか?

絵に隠された関係性-1「文学」と「物語」

芭蕉の句と「助六」が結びつくのはなぜか?
上段は芭蕉の句「花の雲 鐘は上野か浅草か」。下段には、歌舞伎「助六」の一場面を描きます。花川戸の助六(花川戸は浅草の地名)と、句に見える「浅草」を結びつけたものでしょう。
芭蕉の句とともに 助六を描く その縁は浅草
三代歌川豊国 「見立三十六句選 あけまき すけろく」

三代歌川豊国 「見立三十六句選 あけまき すけろく」

百人一首と歌舞伎の名場面との共通性は?
上段に見えるのは前大僧正行尊(さきのだいそうじょうぎょうそん)の「もろともに あハれとおもへ 山さくら 花よりほかにしる人もなし」という和歌。下段には芝居の「妹背山女庭訓(いもせやまおんなていきん)」の「山の段」での久我之助を描きます。劇中に登場する桜の枝や、久我之助の雛鳥への恋心を、歌と結びつけたものでしょうか。
行尊の歌とともに 久我之助を描く その縁は桜
歌川広重「小倉擬百人一首 前大僧正行尊 久我之助」

歌川広重「小倉擬百人一首 前大僧正行尊 久我之助」

絵に隠された関係性-2「地名」と「物語」

「平景清」と所縁のある神社は?
東海道の宿場、宮宿を背景に描き、歌舞伎の登場人物でもある平景清を手前に描きます。景清は宮宿にある熱田神宮に所縁があることから、両者が結び付けられているのでしょう。
宮とともに 平是清を描く その縁は熱田神社
三代歌川豊国 「東海道五十三次之内 宮 景清」

三代歌川豊国 「東海道五十三次之内 宮 景清」

宿場町と同じ名前の名船頭は誰?
東海道の宿場である桑名宿を題名とし、大坂の名船頭であった桑名屋徳蔵が海坊主に遭遇し、問答してこれを退けるという伝承を描いています。言うまでもなく、両者を結びつけるのは「桑名」です。
桑名とともに 桑名屋徳蔵を描く その共通項は桑名
歌川国芳 「東海道五十三対 桑名 船のり徳蔵の伝」

歌川国芳 「東海道五十三対 桑名 船のり徳蔵の伝」

富士山の麓で作られる名物とは?
富士山にほど近い東海道の宿場、原宿を背景に描き、手前にはこの辺りの名物である富士の白酒にちなんで江戸の白酒売の姿を描いています。
原とともに 白酒売りを描く その狙いは富士の白酒
三代歌川豊国・歌川広重 「双筆五十三次 はら」

三代歌川豊国・歌川広重 「双筆五十三次 はら」

甲州を舞台に繰り広げられる歌舞伎の名作とは?
甲州屋(甲州は甲斐国のこと)という料亭の名前から、信玄・謙信を題材とした歌舞伎「本朝廿四孝」を連想し、登場人物である武田勝頼を人気役者八代目市川団十郎の似顔で描いています。
甲州屋とともに 武田勝頼を描く その共通項は甲州
三代歌川豊国・歌川広重 「東都高名会席尽 甲州屋 武田かつ頼」

三代歌川豊国・歌川広重 「東都高名会席尽 甲州屋 武田かつ頼」

<見どころの一点>

三代歌川豊国 「東海道五十三次ノ内 岡崎駅 其二 政右衛門女房 お谷」

三代歌川豊国 「東海道五十三次ノ内 岡崎駅 其二 政右衛門女房 お谷」

三代歌川豊国 「東海道五十三次の内 岡崎駅 政右衛門」

三代歌川豊国 「東海道五十三次の内 岡崎駅 政右衛門」

東海道の各宿場とともに、宿場から連想される歌舞伎の登場人物と、その配役に相応しい役者を見立てた揃物のうち1点。本図の背景に描かれるのは岡崎宿で、手前に描かれるのは「伊賀越道中双六」など歌舞伎の「伊賀越もの」に登場する唐木政右衛門(右)と政右衛門の女房であるお谷(左)。役者は政右衛門が四代目中村歌右衛門、お谷は四代目尾上梅幸です。「伊賀越もの」は「仮名手本忠臣蔵」や「曽我もの」と並び、「仇討もの」の人気作としてたびたび上演されました。本図のキーワードは、「岡崎」。岡崎宿と、雪の中、お谷が政右衛門を訪れる「岡崎の段」をかけています。雪中の場面であることに合わせてか、背景に描かれる岡崎宿は雪景色。題名の周囲には煙草の葉や笠、納札(おさめふだ)、「火用心」と書かれた提灯などが小さな絵で描かれていますが、これらは全て「岡崎の段」の場面に登場するモチーフです。また、2図のうち右図は嘉永5年5月に売りだされ、7000枚が摺られた大ベストセラーの浮世絵としても知られます。ちょうどこの絵が出される数ヶ月前、人気役者であった四代目中村歌右衛門がなくなっており、本図はすでに亡くなった名優を偲ぶものでした。左図は右図の3ヶ月後に出されたもので、背景もつながることから、両者は対の作品として出されたことが分かります。
入館料
一般700円
大高生500円
中学生以下無料
イベント
学芸員によるスライドトーク

本展の担当学芸員が見どころをご案内します。

日程12月4日(水)・14日(土)・18日(水)
時間14:00~(40分程度)
場所太田記念美術館 視聴覚室(B1)
参加方法申込不要 参加無料(要入場券)
開館日カレンダー
カレンダー

『富士山の浮世絵 -太田記念美術館収蔵品展』

歌川広重 「冨士三十六景 駿河薩タ之海上」
企画展
2014年1月3日(金)~1月26日(日)

1月6・14・20は休館となります。

※本展覧会の図録は作成いたしません。

初詣といっしょに初富士を

歌川広重 「冨士三十六景 駿河三保之松原」

歌川広重 「冨士三十六景 駿河三保之松原」

2013年6月、世界文化遺産に登録されたことで話題となった富士山。近年では約30万もの人たちが8合目まで登り、頂上付近は日本一標高の高い場所とは思えないほど多くの人でごった返していると聞きます。現代でも人気の高い富士山ですが、言うまでもなく、富士山は古代より信仰の対象として崇められ、また、江戸時代には多くの画家たちによってその雄大な姿が描きとめられました。富士山は、日本人にとって最も親しみのある心のふるさとと言えるでしょう。本展では、広重を中心に、北斎や国貞、英泉、清親など、浮世絵師たちが描いた富士山を紹介いたします。太田記念美術館のすぐ近くにある明治神宮には、例年三が日ともなると約300万人という全国で最も多い参拝客でにぎわいます。初詣といっしょに初富士をご覧になるのはいかがでしょうか。
歌川広重 「東海道五拾三次之内 原」

歌川広重 「東海道五拾三次之内 原」

葛飾北斎 「冨嶽三十六景 東都浅草本願寺」

葛飾北斎 「冨嶽三十六景 東都浅草本願寺」

歌川国芳 「東都富士見三十六景 新大はし橋下の眺望」

歌川国芳 「東都富士見三十六景 新大はし橋下の眺望」

沢雪嶠 「浮絵 上野花見之図」

沢雪嶠 「浮絵 上野花見之図」

<見どころの一点>
歌川広重 「冨士三十六景 駿河薩タ之海上」

歌川広重 「冨士三十六景 駿河薩タ之海上
「冨嶽三十六景」の名作で知られる葛飾北斎が亡くなった後、広重が初めて手掛けた富士図の連作です。北斎の富士山は構図の面白さに偏り過ぎているが、自分の富士山は見たままの情景を描いていると述べた広重。波飛沫の合間から見える富士山を描いた本図は、北斎の「神奈川沖浪裏」への挑戦状、あるいは偉大なるライバルへのレクイエムと言えるかもしれません。
入館料
一般700円
大高生500円
中学生以下無料
イベント
学芸員によるスライドトーク

本展の担当学芸員が見どころをご案内します。

日程1月10日(金)・18日(土)・21日(火)
時間14:00~(40分程度)
場所太田記念美術館 視聴覚室(B1)
参加方法申込不要 参加無料(要入場券)
開館日カレンダー
カレンダー

 『葛飾応為「吉原格子先之図」 -光と影の美』

企画展
2014年2月1日(土)~2月26日(水)

2月3・10・17・24日は休館となります。

※本展覧会の図録は作成いたしません。

父は北斎 知られざる異才の女絵師

葛飾応為という浮世絵師の名を知っている人はどれほどいるでしょうか。応為は天才絵師・北斎の娘であり、自らも絵師として活躍した女性。代表作「吉原格子先之図」は、交錯する光と影で吉原の夜の情景を表現したものです。暗闇のなかに浮かびあがる遊女と遊客たちの姿は、どこか幻想的ですらあります。応為は、美人画においては北斎を超える力量であったと評価されることもあったようで、北斎晩年の作品制作を補佐していたと伝えられています。しかし残念なことに応為の手による作品は世界に数点しか確認されていません。また一度嫁いだものの、気の強さが災いし離縁。その後は北斎の元で過ごしたようですが生没年はいまだにわかっていません。本図のように異彩を放つ作品を世に送り出した応為。しかし作品数の少なさや謎に満ちた生涯も原因し、その名はいまだ一部の美術ファンに知られるにとどまっています。本展では、応為の貴重な代表作「吉原格子先之図」を中心に、様々な絵師が光と影をたくみに表現した浮世絵作品をご紹介します。

※ 応為の作品は「吉原格子先之図」 『女重宝記』のみの展示です。

葛飾応為「吉原格子先之図」

葛飾応為「吉原格子先之図」

日本絵画ではモチーフの影を表現することは多くありません。しかし浮世絵のなかには西洋版画の学習をふまえた、たくみな陰影表現を用いる作品も見られます。本展では応為のほか、歌川国貞や歌川国芳、歌川広重、小林清親など、一流浮世絵師たちが手がけた作品をご紹介します。光と影とを表現する、絵師たちの繊細な感受性に触れてみてください。
小林清親「両国花火之図」

小林清親「両国花火之図」

歌川国貞「月の陰忍逢ふ夜 月みる美人」

 歌川国貞「月の陰忍逢ふ夜 月みる美人」

歌川広重「名所江戸百景 猿わか町よるの景」

歌川広重「名所江戸百景 猿わか町よるの景」

歌川国芳「東都名所 新吉原」

歌川国芳「東都名所 新吉原」

入館料
一般700円
大高生500円
中学生以下無料
イベント
学芸員によるスライドトーク
※ 2月分のスライドトークは全日程終了いたしました。
開館日カレンダー
写真サンプル

『追憶の広重  -浮世絵歴史散歩』

歌川広重「名所江戸百景 する賀てふ」
企画展
2014年3月1日(土)~3月23日(日)

3月3・10・17日は休館となります。

※本展覧会の図録は作成いたしません。

様変わりする東京に、150年前の「江戸」を見つけよう

7年後にオリンピックをひかえ、急激に様変わりしつつある東京。新名所・東京スカイツリーや、アニメ文化の発信地・秋葉原など、刻々と姿を変えていく東京の町並みには、意外にも東京がまだ「江戸」であった時代の痕跡が数多く残っています。風景画の巨匠・歌川広重が晩年の傑作「名所江戸百景」シリーズを描いたのが、今から約150年前のこと。約120図に及ぶシリーズには、1850年代の江戸のさまざまな場所が生き生きと写し取られています。広重が描いた絵と同じ場所に、2014年の今、立ってみたら―。それが本展覧会のテーマです。全く失われてしまった名所、形を変えて生き残っている名所、150年前と全く変わらない景色など、「江戸から東京」への、さまざまな場所の時間の流れを辿ってみませんか?

再開発が進む御茶ノ水・秋葉原界隈

江戸から変わらぬ眺めとは?

近年、複合型商業施設が次々にオープンし、急激な様変わりを見せる御茶ノ水。アニメ文化の聖地であり、メイド服姿の女性たちが道行く人に声をかける秋葉原。新しい東京の姿を象徴する街の一つであるこの付近を、江戸の浮世絵師・歌川広重は絵に写しとっています。「名所江戸百景昌平橋聖堂 神田川」は、昌平橋から御茶ノ水方面を眺めた図。昌平坂や湯島聖堂の見える風景は、現代でも予想以上に当時の雰囲気を残しています。様変わりする新しい街のすぐそばに、意外な江戸の痕跡をたどることができるのです。
歌川広重「名所江戸百景 昌平橋聖堂 神田川」

歌川広重「名所江戸百景 昌平橋聖堂 神田川」

歌川広重「名所江戸百景 昌平橋聖堂 神田川」現在

三井財閥の中心地・三越前付近

江戸時代には富士見の名所だった?

通りをはさんで両側に立ち並ぶのは、暖簾に染め出された「井」の字に「三」の紋から、当時全盛を誇った三井越後屋の建物であることが分かります。越後屋が位置していた駿河町は、富士山が見えることからその名がついたとも言われ、当時、富士見の名所として知られました。本図にも、雲の向こうに大きく富士が描かれています。実はこの絵に見える通りは、現在で言うと日本橋三越本店と三井本館の間の道に当たり、本図はこの通りを西に向かって描いたものです。描かれた建物は大きく様変わりしていますが、両側が三井関連の建物であることに変わりはなく、江戸から続く歴史を感じることができるでしょう。
歌川広重「名所江戸百景 する賀てふ」

歌川広重「名所江戸百景 する賀てふ」

三越前付近現在

オープンして一年を経た新名所・東京スカイツリー

もしスカイツリーから江戸の景色を眺めてみたら?

歌川広重「東都名所 浅草金龍山年之市群集」

歌川広重「東都名所 浅草金龍山年之市群集」

2012年5月にオープンして一年半を経た東京スカイツリー。今では東京タワーに代わる新名所としてすっかり定着しました。スカイツリーのお膝元・浅草も多くの観光客でにぎわいを見せています。もし、江戸時代にスカイツリーがあったら?―そんな空想に答えるような絵を、広重は描いています。「東都名所 浅草金龍山年之市群集」はスカイツリーとは言わないまでも、かなり高いところから見下ろす「俯瞰(ふかん)」の視点で浅草寺の歳の市の様子を捉えた作品。広重の想像力が、そんな楽しい空想を可能にしてくれるのです。同時にこの絵からは、江戸時代も今も変わらない、歳の市の賑いをうかがい知ることが出来ます。

失われた江戸の名所

三十三間堂は江戸にもあった?

歌川広重「名所江戸百景 深川三十三間堂

歌川広重「名所江戸百景 深川三十三間堂」

画面を斜めに横切る細長い建築物が描かれています。どこかで見覚えのある建物の名称は「三十三間堂」。と言ってもお馴染みの京都の三十三間堂ではなく、かつて江戸・深川にあった三十三間堂なのです。三十三間堂の端から端まで矢を射通す「通し矢」という競技が京都で流行し、その流れで江戸の浅草に同様の寺院が建てられました。元禄11年(1698)に焼失しましたが、その後深川の富岡八幡宮付近に再建され、通し矢も行われたということです。残念ながら明治5年(1872)には取り壊され、現在では絵の中でのみその姿を偲ぶことができる、失われた名所となりました。

入館料
一般700円
大高生500円
中学生以下無料
イベント
学芸員によるスライドトーク

本展の担当学芸員が見どころをご案内します。

日程3月5日(水)・15日(土)・19日(水)
時間14:00~(40分程度)
場所太田記念美術館 視聴覚室(B1)
参加方法申込不要 参加無料(要入場券)
開館日カレンダー
カレンダー

『歌川広重「月に雁」 -花鳥風月の美』

歌川広重「木曽海道六拾九次之内 洗馬」
企画展
2013年8月31日(土)~9月26日(木)

9月2・9・17・24日は休館となります。

秋の夜の一場面を描いた歌川広重の「月に雁」。切手にもなっており、浮世絵の名品として広く親しまれています。「月に雁」の他、歌川広重の作品を中心に、四季折々の風情ある自然の美を描いた浮世絵をご紹介します。
歌川広重「月に雁」

歌川広重「月に雁」

歌川広重 「木曽海道六拾九次之内   洗馬」

歌川広重「木曽海道六拾九次之内 洗馬」

入館料
一般700円
大高生500円
中学生以下無料
イベント
学芸員によるスライドトーク

本展の担当学芸員が見どころをご案内します。

日程9月1日(日)・6日(金)・10日(火)
時間14:00~(40分程度)
場所太田記念美術館 視聴覚室(B1)
参加方法申込不要 参加無料(要入場券)
開館日カレンダー
カレンダー

『江戸の美男子 -若衆・二枚目・伊達男』 春信・歌麿・北斎・国芳が描く男性たち

歌川国芳「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」(個人蔵/ 前期展示)
企画展
2013年7月2日(火)~8月25日(日)
前期:2013年7月2日(火)~7月28日(日)
後期:2013年8月1日(木)~8月25日(日)
※前後期で展示替え

7月8・16・22・29~31日/8月5・12・19日は休館となります。

はじめに

勝川春章「桜下詠歌の図」(前期展示)花の下で和歌を詠む、若く美しい男性に女性たちの熱い視線が注がれる。

勝川春章「桜下詠歌の図」(前期展示)花の下で和歌を詠む、若く美しい男性に女性たちの熱い視線が注がれる。

浮世絵といえば美しい女性たちを描く美人画ばかりが注目されますが、実は、見目麗しい美少年や二枚目の歌舞伎役者、あるいは粋でいなせな伊達男など、美しくてカッコいい男性たちも頻繁に描かれています。手がける絵師も鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川国芳などの主要絵師をはじめ、多数にのぼります。魅力的な男性の姿は絵師にとっても重要な題材であったと言えるでしょう。本展では、男性を描いた作品に焦点をあて、理想とされた男性像の変遷を辿ります。これら浮世絵に登場する男性像を通して、江戸時代の人々の美意識に新たな側面から触れていただければ幸いです。

人気絵師、美男子を描く―春信、清長、歌麿、北斎、国芳、国貞

多くの一流絵師たちが、個性をいかした男性像を世に送り出しました。春信は華奢で中性的な若衆を得意とし、歌麿は遊女や町娘の恋の相手として色気のある若衆や青年を描きました。幕末に活躍した国芳や国貞は、侠客などの勇ましい姿も多く手がけるようになります。時代を牽引した絵師たちが描く男性像からは、人気のある男性像の変遷の歴史も知ることができるのです。
鈴木春信「風流うたひ八景 ゑびらの晴嵐」(前期展示)

   鈴木春信「風流うたひ八景 ゑびらの晴嵐」(前期展示)

歌川国芳「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」(個人蔵/ 前期展示)

歌川国芳「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」(個人蔵/ 前期展示)

江戸の美男子勢揃い!

歌川豊広「観桜酒宴図」(後期展示)吉原遊郭の一場面。主人公は花魁とその隣に座る男性。

歌川豊広「観桜酒宴図」(後期展示)吉原遊郭の一場面。主人公は花魁とその隣に座る男性。

浮世絵に登場する「美男子」のタイプはバラエティーに富んでいます。若く美しい姿で女性はもとより、ときには男性も魅了した若衆。若衆は浮世絵でも女性と見まがう美しさで描写されています。遊里で粋に遊ぶ「通」と称される男性も登場し、人々の注目を浴びます。その知的で洗練されたたたずまいは、大人の男性の色香も漂わせています。一方で「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉に象徴されるように、威勢が良く男気にあふれた男性も江戸っ子には好まれました。さらには光源氏や源義経など、古典に取材した貴公子も絵師は手がけます。江戸っ子が様々な男性の異なる魅力を、楽しんでいたことがわかります。
菊川英山「江戸の花役者ひいき 尾上賀朝」(前期展示)

菊川英山「江戸の花役者ひいき 尾上賀朝」(前期展示)

喜多川歌麿「当世恋哥八契」(たばこと塩の博物館/後期展示)

喜多川歌麿「当世恋哥八契」(たばこと塩の博物館/後期展示)

江戸の男性像を探る―新しい視点

これまで浮世絵の美人画については、様々な見地から研究され、表現の変遷や描かれた女性たちについても多くのことが明らかになってきています。一方で、男性像に絞った考察はまだ十分には行われていません。しかし美人画と同様に、画中の男性像にも、江戸時代の人々の理想や美意識が反映されています。本展は、「男性はいかに描かれたのか」とする視点から、江戸時代文化の諸相へアプローチする初の試みです。
葛飾北斎「若衆文案図」(氏家浮世絵コレクション/後期展示)どこか悩ましげな表情の若衆。書いているのは恋文であろうか。

葛飾北斎「若衆文案図」(氏家浮世絵コレクション/後期展示)どこか悩ましげな表情の若衆。書いているのは恋文であろうか。

歌川国貞(三代目歌川豊国)「花誘吉原の夜雨 東八景ノ内・中村歌右衛門」(後期展示)江戸っ子を魅了した粋な侠客、助六。

歌川国貞(三代目歌川豊国)「花誘吉原の夜雨 東八景ノ内・中村歌右衛門」(後期展示)江戸っ子を魅了した粋な侠客、助六。

<見どころの作品>
歌舞妓堂艶鏡「三代目市川八百蔵の梅王丸」(後期展示)

見得を切る端正な顔立ちの美男子。描かれるのは寛政8年(1796)7月都座「菅原伝授手習鑑」に取材した、三代目市川八百蔵演じる梅王丸です。三代目市川八百蔵は、容貌が優れていたことで知られた歌舞伎役者。没後に記された評判記で「世話狂言にて、姿かつかうのよい人は、故人中車(八百蔵)、今は錦升(五代目松本幸四郎)、梅幸(三代目尾上菊五郎)」と大スターたちとともに名を挙げられるほどでした。 また作者の歌舞妓堂艶鏡は、写楽の大首絵に触発されたとされる作品を発表した絵師。しかし活躍した期間は大変短く、遺作も7点しか確認することができません。いわば伝説の絵師ともいえる歌舞妓堂艶鏡。その歌舞妓堂艶鏡が、当代きっての美丈夫を描いたのが本図なのです。
入館料
一般700円
大高生500円
中学生以下無料
イベント
学芸員によるスライドトーク

本展の担当学芸員が見どころをご案内します。

日程7月3日(水)・6日(土)・9日(火)/8月1日(木)・4日(日)・9日(金)
時間14:00~(40分程度)
場所太田記念美術館 視聴覚室(B1)
参加方法申込不要 参加無料(要入場券)
開館日カレンダー
カレンダー

『北斎と暁斎 -奇想の漫画』 

特別展
2013年4月27日(土)~6月26日(水)
前期:2013年4月27日(土)~5月26日(日)
後期:2013年5月31日(金)~6月26日(水)
※前後期で展示替え

4月30日/5月7・13・20・27~30日/6月3・10・17・24日は休館となります。

二人の鬼才、夢の競演

ユーモラスな動きで踊る人々や、波や風、雨などの自然、妖怪や幽霊など、この世の森羅万象を描き出した葛飾北斎(1760~1849)の『北斎漫画』。その北斎の絵本の特色を最も色濃く継承したのが、狩野派の絵師でありながら、浮世絵の世界にも深く親しんだ河鍋暁斎です。暁斎は、『暁斎漫画』や『暁斎酔画』などの絵本で、踊る骸骨や擬人化された蛙などのユーモラスな画題のみならず、北斎に匹敵するほどのありとあらゆるテーマを手掛けています。本展では、今まで比較して語られることの少なかった、北斎と暁斎という二人の天才絵師たちの絵本に着目し、するどい観察眼に基づく超絶技巧の描写力や、現代のマンガへつながるようなユーモアとパワーに溢れた奇抜な発想力を紹介いたします。

現代マンガのルーツ

北斎や暁斎が描いた「漫画」とは、さまざまなモチーフを気の向くままに描いたスケッチを意味します。絵とセリフでストーリーを読み進める現代の「マンガ」とは大きく異なりますが、線を用いて絵を描くという技術において、北斎や暁斎の漫画は、現在マンガのルーツの一つと言えるでしょう。描けぬものは何も無い。二人の絵師の素晴らしい描写テクニックをご覧ください。
葛飾北斎『北斎漫画』十二編(太田記念美術館蔵 /後期展示)

   葛飾北斎『北斎漫画』十二編(太田記念美術館蔵 /後期展示)

河鍋暁斎『暁斎酔画』三編 (太田記念美術館蔵/後期展示)

   河鍋暁斎『暁斎酔画』三編 (太田記念美術館蔵/後期展示)

奇抜でユーモラスな動き

裸でコミカルなポーズをとる人や面白い表情をしている人。『北斎漫画』には思わず笑ってしまいそうなユーモラスでリズミカルな動きをした人々が数多く登場します。しかし、暁斎も負けてはいません。暁斎は多くの人が一つの画面に群がる群像表現を得意としていますが、暁斎らしさが出ていると言えば何と言っても踊る骸骨たち。骨だけの彼らの動きは何とも人間臭いものばかりです。
葛飾北斎『北斎漫画』八編 (太田記念美術館蔵/前期展示)

葛飾北斎『北斎漫画』八編 (太田記念美術館蔵/前期展示)

河鍋暁斎『暁斎漫画』 (太田記念美術館蔵/後期展示)

河鍋暁斎『暁斎漫画』 (太田記念美術館蔵/後期展示)

動物 描き尽くす北斎、擬人化する暁斎

北斎と暁斎、二人の個性の違いがよく表われているのは、動物の表現でしょう。哺乳類、鳥類、魚類、爬虫類、さらには空想上の動物まで、あらゆる種類のものを描き尽くそうとする北斎。一方、暁斎は、カエルや象、モグラなどに、人間さながらの豊かなポーズや表情をとらせており、まるで平安時代の絵巻物「鳥獣戯画」が蘇ったようです。
葛飾北斎『北斎漫画』二編 (太田記念美術館蔵/後期展示)

葛飾北斎『北斎漫画』二編 (太田記念美術館蔵/後期展示)

河鍋暁斎「天竺渡来大評判 象の戯遊」(太田記念美術館蔵/前期展示)

河鍋暁斎「天竺渡来大評判 象の戯遊」(太田記念美術館蔵/前期展示)

自然への鋭い観察眼

波や風など、目に見える形にすることが難しい自然現象を描くことに取り組んでいた北斎。その熱心な探究心は晩年の代表作「冨嶽三十六景」を生み出す大きな原動力となります。一方、暁斎には風景画の作品は少ないですが、「日光地取絵巻」に代表されるように、実際の風景を丹念に写生する観察力に優れていました。
葛飾北斎『北斎漫画』七編(太田記念美術館蔵/前期展示)

葛飾北斎『北斎漫画』七編(太田記念美術館蔵/前期展示)

葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」(太田記念美術館蔵/前期展示)

葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」(太田記念美術館蔵/前期展示)

河鍋暁斎「日光地取絵巻」(河鍋暁斎記念美術館蔵/前後期展示)

河鍋暁斎「日光地取絵巻」(河鍋暁斎記念美術館蔵/前後期展示)

暁斎をもっと知る!首都圏各所にて暁斎の展覧会を同時開催

河鍋暁斎の作品は、本展でご紹介する漫画だけにはとどまりません。狩野派の絵師として、実にさまざまなジャンルの絵画を手掛けています。本展と同じ時期、暁斎の多岐に渡る画業を伝えるべく、三井記念美術館では「河鍋暁斎の能・狂言画」展、(4/20~6/16)、国立能楽堂資料展示室では「世も盡きじ―三井家の能・暁斎の猩々―」展(4/19~6/13)、河鍋暁斎記念美術館では「暁斎が斬る! 時事報道・世相風刺」展(5/1~6/25)が開催されます。合わせてご覧いただくことで、暁斎の魅力がより一層ご堪能できることでしょう。

関連展

暁斎が斬る! 時事報道・世相風刺
5月1日(水)~6月25日(火) 河鍋暁斎記念美術館
河鍋暁斎の能・狂言画
4月20日(土)~6月16日(日) 三井記念美術館
世も盡きじ―三井家の能・暁斎の猩々―
4月19日(金)~6月13日(木) 国立能楽堂 資料展示室

<見どころの作品>

葛飾北斎『北斎漫画』十二編(太田記念美術館蔵/前期展示)

葛飾北斎『北斎漫画』十二編(太田記念美術館蔵/前期展示)

河鍋暁斎『暁斎漫画』(太田記念美術館蔵/後期展示)

河鍋暁斎『暁斎漫画』(太田記念美術館蔵/後期展示)

左上の図は、北斎によるろくろ首や三つ目入道。人間と同じように生活する妖怪たちの姿がユーモラスに描かれています。一方、右上の図は、暁斎による青坊主、鬼、塗仏、濡女。全員にたりと笑っており、不気味な姿なのですが、どことなく愛嬌があります。北斎と暁斎、二人の表現を比較しながら妖怪たちの姿をお楽しみください。
入館料

リピーター割引あり(会期中2回目以降ご鑑賞の方は半券のご提示にて100円割引)

一般1000円
大高生700円
中学生以下無料
開館日カレンダー
写真サンプル

『江戸の女子力-ファッション・メイク・習い事』

企画展
2013年4月2日(火)~4月21日(日)

4月8・15日は休館となります。

※4月の展示は図録を作成致しません。

はじめに

菊川英山「三美人」上から花魁、町娘、芸者。三者三様の装いや髪型にも注目。

菊川英山「三美人」
上から花魁、町娘、芸者。三者三様の装いや髪型にも注目。

女性たちが様々な場面ではつらつと活躍する現代。近年ではファッションや習い事などを通して魅力を磨く「女子力」という言葉もよく耳にするようになりました。江戸時代の女性たちもまた、女性としての魅力を磨くことに熱心だったようです。浮世絵のなかには、流行の着こなしやメイクに挑戦し、お茶やお花などのお稽古事を楽しむ女性たちの姿がいきいきと描き出されているのです。太平の世が続くなかで、庶民にも着飾ることや趣味を持つ余裕が生まれてきました。ファッションリーダーである高級遊女や歌舞伎役者が、着物の着こなしや化粧法に新しい流行を生み出すと、庶民の女性たちは自分たちが可能な範囲でアレンジし楽しみました。江戸時代後期になると、髪型や化粧法の解説書も出版されるようになります。一方で、教養として読書や書道などを嗜み、三味線や踊りなどの芸事を身に付けることにも熱心に取り組みました。江戸の女性たちは外見だけでなく、内面の豊かさや美しさにも磨きをかけることを怠りませんでした。江戸の美人たちが浮世絵のなかで見せる洗練された美意識には、目をみはるものがあります。本展を通して、江戸時代を美しくたくましく生きる女性たちの姿に触れてみてください。

1. ファッションを楽しむ

江戸時代、幕府は庶民の贅沢を戒めるため、何度も奢侈禁止令を発令しました。しかし庶民たちは、着物の柄を下方にのみ施す裾模様や、縞や小紋など地味ながらもバリエーション豊かな文様を生み出しながらファッションを楽しみました。結髪も庶民に広がるとともに、多様なアレンジが生み出されていきます。簪をはじめとする装飾品にもこだわりながら、女性たちは思い思いに自分の魅力を引き出す努力をしていたのです。
歌川国貞(三代歌川豊国)「江戸名所百人美女 尾張町」

歌川国貞(三代歌川豊国)「江戸名所百人美女 尾張町」

溪斎英泉「浮世四拾八手 ひゐきをたのしミにミる手」

溪斎英泉「浮世四拾八手 ひゐきをたのしミにミる手」

2. 江戸美人のメイク法

白粉を塗り、眉を整え、紅を引く。浮世絵には真剣な表情で鏡に向かってお化粧をしている、今と変わらない女性たちの姿が数多く見られます。江戸時代後期には白粉や紅などの化粧品も庶民に手の届くものとなっていました。浮世絵師は、鏡を見ながら化粧直しをする女性や、顔の産毛のお手入れをする女性の姿も度々描いています。当時の女性も現代女性に負けず劣らず「美」に対して貪欲だったようです。
溪斎英泉「時世美女競 東都芸子」緑色に発色した下唇は、当時流行の「笹色紅」という化粧法。

溪斎英泉「時世美女競 東都芸子」緑色に発色した下唇は、当時流行の「笹色紅」という化粧法

歌川国貞(三代歌川豊国)「江戸名所百人美女 芝神明前」

歌川国貞(三代歌川豊国)「江戸名所百人美女 芝神明前」

3. 江戸の習いごと事情

現代では様々な趣味の教室が開かれ、大勢の女性たちで賑わっています。江戸時代にも茶道や三味線、生花などの芸事を身に付けた女性たちがたくさんいました。武家の女性は嗜みとしてこれらを習得していました。また、吉原の高級遊女たちには、高い教養を身に付けた男性も訪れたため、美貌だけでなく和歌や漢詩の教養、芸事の才も求められました。庶民の女性にとっても芸事は、武家奉公などのキャリアアップにつながる重要なスキルでもあったのです。
磯田湖龍斎「雛形若菜の初模様 角玉屋内 みやと」漢詩の教養と見事な筆さばきを見せる、高級遊女のみやと。

磯田湖龍斎「雛形若菜の初模様 角玉屋内 みやと」漢詩の教養と見事な筆さばきを見せる、高級遊女のみやと。

溪斎英泉「十二ヶ月の内 十月 ろひらき」

溪斎英泉「十二ヶ月の内 十月 ろひらき」

4. 働く女性たち

浮世絵師たちは、きびきびと働く女性たちも数多く描き留めました。家事に勤しむ様子はもちろん、習い事のお師匠、髪結いなど、女性ならではの仕事に従事する姿も多く見られます。当時の働く女性のはつらつとした姿をのぞいてみましょう。
月岡芳年「風俗三十二相 たのしんでゐさう 嘉永年間師匠之風俗」

月岡芳年「風俗三十二相 たのしんでゐさう 嘉永年間師匠之風俗」

<見どころの一点>
鳥文斎栄之「風流略六芸 生花」

鳥文斎栄之「風流略六芸 生花」
生花に興じる楚々とした美人。菊の枝を切り落とそうとするところです。左奥の花器には南天も見え、秋から冬にかけての頃と思われます。上品な打掛姿に、既婚者の髪型である丸髷を結うことから、描かれたのは上流階級の既婚女性なのでしょう。題名にある六芸とは、中国で身分の高い者が身に付ける基本的な6つの教養のこと。礼、楽、射、御(馬車を御する術)、書、数からなります。本図は、この六芸を日本の女性が身につけるべき教養の名前に置き換えたシリーズのうちの1点です。他には「画」があり、「風俗略六芸」と称する同様のシリーズに「十種香」「茶湯」「和歌」「琴」があります。本図は、上品な女性像で知られた栄之の優品であるだけでなく、当時の女性にとって、どういった習い事が重要とされたのかを教えてくれます。
入館料
一般700円
大高生500円
中学生以下無料
イベント
学芸員によるスライドトーク

本展の担当学芸員が見どころをご案内します。

日程4月6日(土)・9日(火)・13日(土)
時間14:00~(40分程度)
場所太田記念美術館 視聴覚室(B1)
参加方法申込不要 参加無料(要入場券)
開館日カレンダー
カレンダー